Bリーグ西地区2位の琉球ゴールデンキングスは11日、中地区8位の川崎ブレイブサンダースを沖縄アリーナに迎え、85ー75で勝利した。連勝を3に伸ばし、通算成績は14勝5敗。西地区首位の島根スサノオマジックと勝敗数で並び、地区2位のまま。
両チームの順位だけを見れば順当な結果と言えるが、この日の戦力に限って言えば大きな差はなかったように思える。川崎はエースガードのマシュー・ライトを体調不良で欠いたが、琉球に至ってはビッグマンの一人であるケヴェ・アルマ、岸本隆一と平良彰吾の両ガードの計3人がコンディション不良などで欠場したからだ。
怪我明けの伊藤達哉もまだプレータイムの制限がある。そんな満身創痍のチームを救ったのは、1997年生まれの同級生である松脇圭志と荒川颯である。
松脇はいずれもキャリアハイ更新となる3Pシュート8本成功で24得点、荒川は両数字ともキャリアハイタイの3Pシュート3本成功、11得点と要所でスコアを挙げた。2人の試合後のコメントからは、岸本らの不在による得点力の低下を補うために強い覚悟を持って試合に臨んだことがうかがえた。
「マツに打たそう」という共通認識が奏功
インサイドの守りを重点的に固めた川崎に対し、琉球は3BIGも含めて攻めあぐねる時間帯もあり、2Pシュートの成功率が36.8%に低下。特に第3クォーターはわずか8得点しか決められず、このクォーターまではリードチェンジが続く展開となった。
そんな中でも、松脇は序盤から良いシュート感覚を維持する。試合開始直後に放った左45度からの3Pシュートがいきなりヒットし、「タッチがいいな」と感じたという。第1Qと第2Qに2本ずつを沈め、波に乗る。59ー59の同点で迎えた勝負の第4Qでは、5本中4本を決める圧巻の活躍で勝利の立役者となった。
一方の荒川は、先行される入りとなった第1Qで2本を決めた。第2Qの初めのオフェンスでは相手が2ー3のゾーンディフェンスを敷いていると見るや、すかさず左45度からゴールを射抜き、チームに勢いをもたらした。
桶谷大HCは2人の活躍を「マツ(松脇)に関しては、彼の活躍でゲームが動いたなと思います。颯の3Pシュートも前半のしんどい時間帯にチームを救ってくれた得点でした」と評した。
松脇は開幕戦から先発を務めていたが、10月下旬に体調不良となり、復帰してからベンチスタートに回っていた。10月26日の広島ドラゴンフライズ戦以来のスターティング5となり、桶谷HCは「スタートに戻って、その期待にちゃんと応えてくれたことが僕は嬉しいです。みんなもしっかり『マツに打たそう』というフィーリングがあったので、そこも良かったです」と続けた。
ハンドラーの人数が限られる中、選手同士の相性を考えて先発の顔ぶれから松脇と脇真大を入れ替えたという。その他にも、松脇が復帰して以降、なかなか波に乗れない状態が続いていたため、復調を後押しする狙いもあったようだ。
「先発に戻し、こちら側が(松脇のシュートを)『チームで作る』ということを本人にもう1回見せないといけないと思っていました。マツはフィジカル的なコンディションも上がってきていますが、フィジカルだけではなく、メンタル的なコンディションも上がってこないとなかなかマッチしていかないと思うので、今日は彼が自信を持てるゲームになったかなと思います」
「得点力が落ちることは意識していた」松脇が見せた熱量
「人数が少なくて難しい部分もあったんですけど、それを言い訳にしたくなかったので、勝てて良かったです」
MVPに選出された松脇が試合後のコート中央でマイクを持ち、ファンを前に発した言葉だ。普段から自然体で淡々としているが、ほぼ8人のローテーションで戦ったこの日は、コメントの端々から熱量と覚悟の強さが感じられた。
「隆一さんがいない分、チームとして得点能力が落ちると思ったので、僕も含めてウイング陣はすごい意識していたと思います。1本目が入った時点で『タッチいいな』と思ったので、この気持ちでどんどん打っていこうという感じでした」
「エゴを出すようなタイプの人間じゃない」とは言うものの、長距離砲でチームにリズムを生み出すという役割は強く自覚している。
「今日みたいにシュートが入ってる時は、オフェンスで自分がシュートを打てるコールで『これをやってくれ』ということをガードに言ったりはします。特別に『俺に打たせろ』というエゴは出してないですが、そこで空いたら打てばいいし、僕のシュートが入ることによってオトリになれればいいかなとも思っています」
体調不良から復帰して以降、自身としても「調子が上がってこない」ということは感じていたと言う。前節の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦では、オープンで打つのを躊躇する場面も見られた。ただ、シューターとして「打たないと調子が上がってこない」ということも分かっている。「空いたら打つ」という原点に立ち返ったことで、「入る感覚をちゃんと掴めたと思います」と好感触を語った。
「PGの意識を捨てる」貫いた自分らしさ 荒川
荒川の言葉からも、この試合に臨む上での覚悟の強さが滲んだ。
「けが人が多い中で、チームとして強くなっていくための試練だと思っています。これまでプレータイムが少なかった選手がステップアップして、そういった経験をさらに積み上げていけるようにやっていければと思います」
自身はSGが本職だが、岸本と平良の離脱でPGを担う必要がある。ただ、マインドセットは「PGという意識を捨てて、とにかくバスケットをやろうと思って臨んだ試合でした」と振り返る。真意はこうだ。
「コントロールをしようとすると、ドライブをしないでまわりばっかりを見てしまいます。それが以前PGをやった時の反省点でした。そうなると、クイックネスなど僕の良さが消えてしまいます。前を向いて、スペースが空いていればドライブをするという強気の部分を貫きました」
確かに、この日は3本成功の3Pシュートも見事ではあったが、積極的なドライブも目立った。決めきれない部分も多かったとはいえ、ペイントエリアをアタックしたことでスペースが生まれ、ジャック・クーリーが押し込んで得点をすることもあった。
三つのターンオーバーや空いた選手にすぐにパスを入れることなど課題も自覚している。「反省点が見えたのが一つ大きなことですし、自分の強みを出すためにアグレッシブにプレーすることがもっと必要だと思います。それを積み重ねていけば、学べるものがもっと増えてくると思います」と前を向く。
同級生である松脇の活躍について受け止めを聞くと、「毎回あれくらいやる力はあると思います。『毎回やれよ』っていう感じです(笑)」と笑顔で話し、頼もしさを感じているようだ。チーム全体としても「いいシュートで終われば、強力なリバウンダーが2人、3人といるので、そこは本当にチームとして大切だと思います。打ち切ることを意識していければと思います」と語った。
開幕時点から負傷者が相次ぐ中でも、各選手がステップアップし、連勝を続ける琉球。この「試練」を通して各選手が成長していけば、フルメンバーが揃った時、さらにチーム力が底上げされるはずだ。
(長嶺 真輝)