3試合で「122分18秒」出場、アルバルク東京のライアン・ロシターが体現した“CSへの熱情”とラストショットへの無念さ
3戦で120分以上出場したアルバルク東京のライアン・ロシター©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 試合終了を告げるブザーが鳴る。

 コート上にいたアルバルク東京ライアン・ロシターがしゃがみ込み、視線を下に向けた。膝をつき、体を支えていた右手が力無くがくんっと崩れ、フロアに着き直してなんとか体勢を保つ。歩み寄った仲間が労って背中をぽんぽんと叩くが、呆然とした表情のまましばらく起き上がれなかった。

 「本当に負けて悔しかった。この気持ちを整理するのは、ちょっと時間がかかるかなと思います」

 13日に有明コロシアムで行われたBリーグチャンピオンシップクォーターファイナル(CS・QF)第3戦で琉球ゴールデンキングスに57ー58で惜敗したA東京は、1勝2敗で敗退が決定。試合後、記者の囲み取材に応じたロシターの言葉には、無念さがにじんだ。

 ただ、ダブルオーバータイムにまでもつれ込んだ第1戦を含むシリーズ3試合でロシターがコートに立った時間は、計130分のうち、両チームを通じて最長となる驚異の122分18秒(平均40分46秒)。スタッツは22.7得点、13.0リバウンド、2.3ブロックの平均ダブルダブルを記録し、チームを力強くけん引する姿は圧巻の一言だった。

毎日練習してきたシュート「悔やまれる」

 第3戦は紙一重だった。

 ロシターが「オフェンスもディフェンスも非常に入りが良くなくて、前半はターンオーバーが目立ち、ディフェンスでもかなりミスがありました」と振り返る通り、序盤は前から激しいプレッシャーを掛ける琉球のディフェンスに押され、前半だけでターンオーバー八つ。ただロシターやメインデルの個人技で粘り、29ー32の僅差で折り返した。

 第3Q以降もほぼ追う展開に。それでも第4Q残り1分4秒で小酒部泰暉がファウルを受けながら3Pを決めて4点プレーを完成させ、土壇場で57ー57の同点に追い付いた。残り22.8秒でアレン・ダーラムにフリースローを与えたが、成功は1本のみ。スコアは57ー58。勝負のポゼッションが訪れる。

 バックコートからテーブス海がボールを運ぶ。トップの位置からロシターとのツーメンゲームで2度ピックを掛け、ディフェンスのズレを作る。テーブスからのバウンドパスを受け、残り7秒でロシターが左エルボー付近から右手でフローターシュートを放った。

 シリーズを通して何度も決めてきた得意の形だ。しかし、ボールは無情にもリングを二度叩き、ゴールからこぼれ落ちた。試合終了間際にレオナルド・メインデルが放った3Pも決まらず、稀に見るロースコアの死闘は、薄氷の差で琉球に軍配が上がった。

 「毎日毎日練習してほぼ決めているシュートだったので、自信もありますし、打ち切ったんですけど、落ちてしまいました。あの最後のショットを決めていたら、結果が変わったかもしれません。あれを外してブザーが鳴ったことは自分の中で悔やまれますし、この気持ちを整理するのは時間がかかるかなと思います」

 試合終了後にしゃがみ込んでいた時の心境を問われ、ロシターは悔しそうな表情を浮かべ、そう振り返った。

シュートを放つロシター©Basketball News 2for1

過去2シーズンは負傷離脱「最後まで戦えて幸せ」

 ただ前述のように、このシリーズを通してのロシターの活躍は見事と言う他にない。数字に表れている部分以外でも、アップの時間や試合の合間に積極的にチームメートとコミュニケーションを取り、強烈なリーダーシップを発揮していた。

 4日間で高強度の試合を3試合行い、いずれもほぼフル出場だったが、流れの悪い時間帯に正確なシュートを射抜いたり、体を張ったリバウンドやブロックでゴールを死守したりとチームを鼓舞し続けた。3試合目での疲労度を聞くと、強いメンタル面がうかがえる答えが返ってきた。

 「勝たなければシーズンが終わる第3戦ですので、疲れという気持ちは全くなかったです。コンディショニングを整え、プライドを持って最後まで戦えた。出場時間は非常に多かったんですが、ここまでやれたことは自分にとっても本当に良かったと感じます。また、ファンの後押しがあったからこそ、ここまでプレーできたと思います」

 宇都宮ブレックスでBリーグ開幕初年度の2016-17シーズンに優勝を経験し、2021-22シーズンにA東京へ移籍して3シーズン目。2017-18、18-19シーズンに2連覇を達成して以降、低迷していたチームの立て直しを期待されたが、初年度はシーズン途中の怪我で離脱し、2年目の昨シーズンもCS・QFの島根スサノオマジック戦で負傷し、最後のSFはベンチから見守った。期待に応えられなかった悔しさがあるからこそ、今シーズンに懸ける想いは強かった。

 「過去2年間は怪我に泣かされ、CSはチームメートがファイトしているところを座って観るだけでした。今シーズンはこのような形でCSクォーターファイナルをプレーできたことは非常に幸せなことだと思います。だからこそ、何とか自分の力でチームを勝たせたい気持ちがありました。結果は出なかったのですが、過去2年のシリーズでプレーできなかったことに比べ、今年は最後まで戦えたことは良かったです」

 第3戦の試合終了後には、第4Q途中に足首を負傷し、ベンチ裏の椅子に座って試合を見守っていた今村佳太の下にいち早く駆け寄り、健闘を称え合っていた。来シーズンはどのチームに所属するのかはまだ分からないが、一人のプロ選手、そしてリーダーとして優れた人間性を持ち、34歳となった今も高いレベルのパフォーマンスを維持するロシターは、今後も「チームにとって必要とされる選手」であり続けるに間違いない。

(長嶺 真輝)

クォーターファイナルで惜しくも敗退したアルバルク東京©Basketball News 2for1

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