須田侑太郎「自信がある状態がスタンダードに」琉球との天王山・第1Rでキャリアハイの26得点 名古屋ダイヤモンドドルフィンズが地区優勝へ一歩前進
琉球戦で26得点を記録した名古屋ダイヤモンドドルフィンズの須田侑太郎©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ西地区の頂上決戦第1ラウンドは、2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(名古屋D)に軍配が上がった。

 名古屋Dは27日、同地区1位の琉球ゴールデンキングスをホームのドルフィンズアリーナに迎え、83ー77で勝利。通算成績を38勝19敗とし、レギュラーシーズン(RS)残り3試合で琉球とのゲーム差を「2」に縮めた。琉球の地区優勝マジックは「2」のまま。名古屋Dは初の地区優勝の可能性を残した。両軍は28日にも同アリーナで顔を合わせる。

 この天王山で圧巻の活躍を見せたのは、琉球が古巣でもある名古屋Dのキャプテン、須田侑太郎だ。3P5本を含むキャリアハイの26得点を挙げてチームを力強くけん引。28日の第2ラウンドに向けて「明日も勝たなければいけない試合。もう一度集中して勝ちたいです」と気合いを入れる。

連続スティールと須田の3連続3Pで流れ

 両チームとも激しいディフェンスで試合に入り、どちらもスタートから得点が伸びない。そんな重たい展開の中、第1Q終盤に名古屋Dが強みであるオールコートでのディフェンスから流れを引き寄せるビッグプレーを生む。

 先陣を切ったのは須田だ。ボール運びをする琉球の牧隼利に激しくプレッシャーを掛けると、ハーフコートラインを越えたところでスコット・エサトンも間合いを詰め、パスをカットしてダンクを決めた。さらに佐藤卓磨がヴィック・ローに前線から圧を掛け、ターンオーバーを誘って齋藤拓実がレイアップを沈めた。

 ロースコアながら、これで14ー13と先行して第1Qを終えた名古屋D。2連続でディフェンスを成功させた場面について、須田が振り返る。

 「重たい入りでしたけど、あそこで流れが変わった印象があります。僕たちもターンオーバーがあって嫌な雰囲気を感じていたので。ディフェンスから流れを変えたいと思っていました。今シーズンのドルフィンズを象徴するシーンで変えられて良かったです」

 第2Qに突入すると、いい流れが自身のシュートタッチに乗り移る。開始約2分で左コーナーからこの試合一本目の3Pをスウィッシュで決めると、そこからさらに3本の長距離砲を沈めた。3本目については小野寺祥太からファウルを受けての4点プレーで、須田はこのクオーターだけで圧巻の15得点。リードを広げ、前半を43ー35で折り返す原動力となった。

 名古屋Dは後半に入ってからもディフェンスの強度が落ちず、第4Qの開始約3分半まで琉球を50点未満に封殺。最後は6点差まで追い上げられたが、強みである3Pは24本中10本(成功率41.7%)を沈め、自分たちのバスケを体現しての快勝と言える内容だった。

レイ・パークスジュニア(左)とハイタッチ©Basketball News 2for1

シーズンの「大きな分岐点」となった前節・島根戦

 試合後、記者会見室に姿を見せた須田は第一声でチームの手応えを語った。

 「プレーオフさながらの激しい試合で、自分たちの強みを出して勝ち切れたことはすごく良かったです。前回の島根戦も自分たちらしい戦い方ができましたが、あれが自分たちのスタンダードです。今日もスタンダードでできた。地区優勝に向けて負けられない試合だったので、良かったです」

 個人としてはフィールドゴール成功率81.8%で26点を決め、体を張ったディフェンスや声掛けでもチームを鼓舞し続けた。自身のパフォーマンスの評価を聞かれると、キャプテンとしての役割にフォーカスしたコメントを発した。

 「結果的に26点は良かったですけど、自分としては今シーズンキャプテンとして本当にいろんなものが見えてきました。それがいいのかもしれないですけど、あまり自分にベクトルを向け過ぎないことができています。チームを引っ張れた充実感、チームが勝利したことに対して良かった、というマインドが強いです」

 チームはこれで3連勝。その前はいずれも自分たちより下位のファイティングイーグルス名古屋(FE名古屋)に17点差、大阪エヴェッサに16点差で敗れ、一時調子を落としていた。西地区優勝を争うレギュラーシーズン最終盤で下降しかけたチームを立て直したのも須田の声掛けだった。

 「チームとして『やばい』という雰囲気があったので、自分が先頭を切ってチームに働き掛けました。自分たちは良い時もあれば、悪い時もあるのが課題で、それが出てしまった。ハードスケジュールの中で疲労が溜まっていたこともあり、いつも同じ準備をしていると(エナジーが)足りないんです。それを埋める準備をしないと戦えない。だから、もっと準備に対してしっかりアプローチしようという話をしました」

 その過程を経て、迎えた前節の島根スサノオマジックとの連戦は100ー85、93ー63で快勝。さまざまな守り方を駆使するチェンジングディフェンスで失点を抑え、速攻や3Pで得点を量産する本来の姿を取り戻した。須田はFE名古屋戦、大阪戦の負けを「意味がある負けだった」と振り返り、こう続けた。

 「悔しい敗戦があり、前回の島根戦からギアが上がりました。ここで崩れてしまうのか、もう一度やり返せるのか、島根戦は大きな分岐点だったと思います。自信に満ち溢れてる雰囲気がスタンダードになってきています。この状況を引っ張るのは僕自身だと思うので、疲れてる、疲れていないに関係なく、それは自分の仕事としてやり切りたいと思います」

記者の質問に答える須田©Basketball News 2for1

初の地区優勝へ「明日勝たないと意味がない」

 対琉球は今季3戦全勝となり、Bリーグ開幕以来初めて琉球に対してレギュラーシーズンでの勝ち越しが決まった。「どこのチームに対しても自分たちのディフェンスをして、しっかりターンオーバーを誘うということをして、結果的に琉球に勝ち越すことができました。昨季王者に対し、毎試合チャレンジをするという気持ちで臨んでいます」と言う。

 ただ28日にもある琉球戦で敗れれば、地区チャンピオンの座は琉球のものとなる。背水の陣であることに変わりはなく、気の緩みは欠片ほども無い。試合後、コート中央でマイクを握った須田の言葉だ。

 「今日は勝ちましたけど、明日勝たないと全く意味がないです。ここにいる皆さん、今日の勝利で満足している方は誰もいないと思うので、明日ドルフィンズ一丸で一勝をもぎ取りましょう」

 この日、会場には5,634人の観客が詰め掛け、大歓声が途切れることはなかった。須田が「会場の雰囲気のおかげで気持ち良くプレーすることができたので、皆さんに感謝しています」と言ったように、ホームの後押しは間違いなく大きな力になったはずだ。名古屋Dは大逆転で地区優勝を果たし、なんとしてもこの心強いホームコートの歓声を背にCS初戦のクオーターファイナルを戦いたいところだろう。

 そのためにも、天王山の第2ラウンドとなる28日の試合は、なんとしても負けられない一戦となる。

(長嶺 真輝)

地区優勝に向けて負けられない戦いが続く©Basketball News 2for1

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