Bリーグ西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズは10日、同1位の琉球ゴールデンキングスと沖縄アリーナで対戦した。西地区の頂上決戦らしく、延長戦にもつれ込む大接戦となったが、最終盤で勝負強いシュートを決め続けて98ー95で競り勝った。
連勝を6に伸ばし、通算成績は34勝17敗。琉球とのゲーム差を「3」に縮めた。レギュラーシーズンは残り9試合で、琉球とは4月27、28の両日にホームであと2試合対戦する。10日の試合で負けていればクラブ初の地区制覇は厳しい状況となっていたが、望みを残した形だ。
この日は出場した11人が全員得点を記録。3月には4連敗して一時調子を落としていたが、ここにきてチーム力の高さを取り戻してきている。息の詰まるような接戦の中、勝負を決める3Pを沈めた須田侑太郎が「逆に楽しむことができた」と言ったように、チーム内にはポジティブがオーラが溢れている。
延長で3P「5分の4成功」 最後は須田のクラッチで決する
試合はスタートから琉球に8連続得点のランを許したが、その後はやや名古屋Dペースで進んだ。第4Q中盤にはこの試合最大となる9点のリードを奪った。琉球も岸本隆一の単独速攻やヴィック・ローの3Pなどで粘ったが、試合時間残り13秒で齋藤拓実がフリースローを2本決めて6点差。勝敗が決したかに見えた。
しかし、素早くオフェンスに転じた琉球は、この日キャリアハイの33得点を挙げた今村佳太が残り8.0秒で3Pをヒット。リスタートでエンドラインからのパスが乱れ、アウトオブバウンズとなって再び琉球ボールとなった。さらに今村が、齋藤にコンテストされた状態で左コーナーからキャッチ&シュートの3Pをねじ込み、83対83の同点で延長戦に突入した。
平日開催にも関わらず、7,026人の観客が集まった沖縄アリーナは騒然。完全にホームの琉球優位という雰囲気だったが、名古屋Dは動じない。延長戦の初めのポゼッションでスコット・エサトンが冷静にフックシュートを沈めると、齋藤、ティム・ソアレス、中東泰斗が大事な3Pを決め続け、残り1分2秒で6点を先行した。
ここから6連続得点を許し、残り16.5秒でまたも同点に追い付かれたが、最後はオフボールのスクリーンを使って左コーナーで一瞬フリーになった須田が、齋藤からのパスをキャッチ&シュートで打って3Pを成功。粘る琉球を振り切った。
エサトンがいずれもチームトップの21得点、11リバウンド。齋藤も18得点、12アシストのダブルダブルで力強くチームをけん引した。
昨季の悔し涙を力に変えた須田「みんないい顔してた」
1月17日にホームであった琉球戦でも試合時間残り11秒で逆転3Pを沈め、2戦続けてヒーローとなった須田。タイムアウト後の最後のプレーは「拓実がアドバンテージをつくる」という共通理解だったが、齋藤からパスが来ることは信じていたという。
「拓実が同じサイドにいて、一瞬ノーマークになったからパスしてくれるだろうと思っていました。信頼関係ですね。来たら打つだけだと。もう時間も時間でしたし、思い切り打ち切ろうという思いでした。僕は拓実が日本でNo.1のガードだと思っています。一瞬の隙を見逃さず、しっかりアシストを決めてくれました」
ホームの大声援を力に変えた琉球のプレッシャーの強さは想像を絶するが、土壇場で2度追いつかれても勝ち切れた要因は何だったのか。「今村選手が3Pを決めて延長に入ったけど、逆に僕はすごく楽しむことができた」と振り返る須田は、延長戦前のベンチの様子を例に挙げた。
「延長が決まってベンチに下がったインターバルの時、『これでこそ西地区首位争いの戦いだよね』という話をして、みんないい顔をしてました。出てるメンバーも、ベンチにいるメンバーもしっかりと気持ちが出ていた。個人的には『すごい幸せな空間だな』ということを感じながらプレーができていました」
相手の勢いを跳ね除けるだけ強固なメンタリティは、沖縄アリーナで行われたCSクォーターファイナルで2連敗を喫し、シーズンが終了した昨季の悔しい経験も糧になったようだ。須田が続ける。
「昨シーズンのプレーオフはここで負けて、僕たちのシーズンが終わりました。あの時に流した悔し涙を忘れたことはない。そういう思いを再確認して今日の試合に臨みました。最初から最後まで、本当に気持ちが入った試合になりました。ドルフィンズとしては、今シーズンのベストゲームだったんじゃないかと感じています」
3月に4連敗 取り戻した「自分たちらしさ」
1月から3月にかけて11連勝と波に乗ったが、3月は同じ西地区の長崎ヴェルカ、島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズに4連敗。一時的に調子を落とした時期に何があったのか。ショーン・デニスHCは、いずれも2月にインジュアリーリストから抹消され、長期離脱から復帰した張本天傑とソアレスの名前を挙げ、こう語った。
「長期の怪我から戻ってきた選手が2人いて、張本選手が12カ月、ソアレス選手は3カ月半くらいほぼプレーしていませんでした。彼らをまたローテーションに入れるところでちょっとギクシャクしていたところがあり、チームとしてどうやって乗り越えるかということに時間がかかりました」
名古屋Dの平均失点は79.4点だが、連敗中は100点以上を奪われる試合もあり、ディフェンス面での課題が見られていた。この時期、デニスHCがチームによく掛けていた言葉が「be us」という言葉だ。「自分たちらしく」という意味だろう。デニスHCが言葉を重ねる。
「負けだした時、チーム内で『be us』という言葉をよく使っていました。要はチェンジングディフェンスがうちのスタイルで、それをやり続けなきゃいけない、と。昨シーズンは7〜8人しかいない時でも勝ち続けられた。そこの原点に戻ろうと。みんながそこを信じて『be us』をやりだしたら、また勝ちだしました。琉球相手で、自分たちのアイデンティティーが分からないチームだったら、今日みたいな結果にはなっていないと思います。自分たちが、どれだけ自分たちのバスケットを信じているかが重要なんです」
発足から8シーズン目を迎えているBリーグにおいて、名古屋Dは西地区に7シーズン、中地区に1シーズン所属してきた。CSに4回出場して強豪の地位は築いているものの、地区優勝の経験はない。
須田が「地区優勝、CS出場権獲得に向けて非常に大きな一勝だった。チームが成長し、前に進めた感触もあります」と言うように、主力の復帰と原点回帰を経て、レギュラーシーズン最終盤でさらにチーム力が増している。CSに出場すれば、地区優勝にとどまらず、さらなる高みを狙えるだけの力は十分にあるだろう。
(長嶺 真輝)