Bリーグ2部(B2)・滋賀レイクスは今シーズン、すでにプレーオフ進出を決め、レギュラーシーズンは西地区で優勝を達成。プレーオフ(PO)セミファイナルまでのホームアリーナでの開催権を獲得するなど、最短でのB1復帰に向けて順調に歩みを進めている。
Bリーグ開幕以降7シーズンを1部(B1)で戦ってきた滋賀だったが、昨シーズンは西地区最下位の14勝46敗でB2に降格。成績不振にあえぎ、22年11月に当時のヘッドコーチ(HC)であったルイス・ギル氏と契約解除、その後は保田尭之アシスタントコーチ(AC)がHC代行を務めるも、23年1月に契約解除。保田HC代行の後を継いでHCに昇格し、今シーズンも継続してHCを務めているのがスペイン出身のダビー・ゴメス氏だ。
35歳のゴメスHCは、ユース時代にはギルHCの元でポイントガードとしてプレーした経験もあり、U14、U15、U16とスペイン代表にも選ばれている。2014年からデンマークの1部リーグでコーチングキャリアをスタートし、2022年にはACとしてデンマーク国内リーグ優勝、FIBAヨーロッパカップベスト4に導くなど、輝かしい成績を残している。
この1年半の間にBリーグで様々な経験を積んできたゴメスHCに、波乱のシーズンを過ごした昨季の心境や今季のチームの状態、B1昇格への思いなどについて語ってもらった。
B2で西地区優勝 「時間をかけてしっかりと勝ち方を教えた」
-昨シーズン途中でHCを引き継いだ時の心境はいかがでしたか
(滋賀のACとして)日本に来た時は、HCを引き継ぐことになるとは思っていませんでした。ただ、ブースターの皆さんと残留の望みを持って戦うことが自分にとって大事だと思っていました。滋賀レイクスと自分の組み合わせが良く、(チームは)自分のような新しいエナジー、ポジティブなフィーリングを欲していたと思いますし、(自分は)ファンの皆さんともよくコネクトしているので、そこをファンの皆さんも求めていたところもあったのかなとも思います。
昨シーズン、HCを受け持ったタイミングはいかにファンや組織と一緒に戦っていけるかということを大事にしていて、結果的に昨シーズンにやってきたことが実を結んで、(今シーズンは)一体になって戦うことができています。HCを引き継ぐ前は4勝28敗だったところから、自分が引き継いでから11勝17敗となりました。11勝17敗の成績で、もし60試合戦えていたら確実にB1に残留できていたと思います。自分に偉大な機会を与えてくれた組織の皆さんに感謝と、自分のコーチングであれば残留が出来たという結果を証明できたことは嬉しく思います。
-今シーズンはB2で「勝てるチーム」に変わることができています
選手の健康面のケアが今シーズンはよく出来ています。そして、自分たちのスタイルに合った選手をリクルートで来たことも理由の一つです。あとは、シーズンの最初から自分が受け持ってコーチングができたことで、どれぐらいの負荷でトレーニングをするか、どういったフィロソフィーを浸透させるのかが(シーズン途中からコーチングするより)容易だと思いました。
昨シーズンは、色んな言葉を使って選手たちをモチベートできるようにし、何回も何回も復唱して選手たちの記憶に残るようにしていました。しかし、今シーズンは逆にリラックスすることを避けるようなアプローチをしています。レイクスに長く在籍している選手たちは負けが先行するシーズンを過ごしてきていたので、どうやって勝つチームになるのかを教えるのは大変なことでした。しかし、時間をかけてしっかりと勝ち方を教え、若い選手の成長も同時に成功させながら西地区1位でいられることは嬉しく思います。
昇格のカギは「POのようにレギュラーシーズンを戦うこと」
-今季のチームの状態はいかがですか
まず始めに、(戦術の)システムが難しいものであったので、シーズン序盤はまあまあな所から始まり、システムに関して自信を持てるようになってから自分たちのポテンシャルを出し始めることができました。宮本(一樹)であったり、20点近い得点をした(湧川)颯斗、マイキー(川真田紘也)もキャリアでベストなシーズンを送れていて、若い選手たちの成長が多く見られたシーズンだと思っています。哲(柏倉哲平)もキャリアでベストシーズンを送れていますし、特に昨シーズンからいる選手たち(柏倉、川真田、湧川、キーファー・ラベナ、野本大智、森山修斗)は組織に対して特別な感情を持っていることは間違いないので、その選手たちのフォーカスレベルの高さもあります。
キーファーは昨シーズンより身体のコンディションが良くなっていたり、哲は昨シーズンにはなかったような自信を持ってプレー出来ていますので、正しい道に繋がってきていると思います。ブロック(・モータム)、JB(ジャスティン・バーレル)のような経験豊富な選手も来てくれて、ライアン(・クリーナー)のような若いエナジーを持った選手がいて、いいバランスを持ってやれています。
あとは、マニ(眞庭城聖)、TEE(田原隆徳)、(山崎)凛は昇格の経験を持った選手です。宮本は過去2年間ファイティングイーグルス名古屋でいいシーズンを送れていませんでしたが、しっかり成長する意思を持ってプレーできています。いま話したことから、チームのリクルートも成功したと思っています。
-プレーオフで上位を目指す上で必要なことは
レギュラーシーズン中にPOのように戦うこと。POのようなレベルの試合をレギュラーシーズンに戦うことができれば、POで急に驚くことなくしっかりと経験したものを出すことができます。ブースターの応援を含め、滋賀ダイハツアリーナの雰囲気はすごく助けになっています。あとは、ゲームのスタートをどれだけ強く入れるか、自分たちのペースでプレーすることがPOで重要なことだと思っています。ファンの皆さんの協力と、自分たちのバスケットができるかどうかが大事になってくると思います。
(インタビュー=田名 さくら)