Bリーグ1部・三遠ネオフェニックスは今シーズン、ここまで42試合を終え34勝8敗と中地区首位を独走している。昨シーズンからチームの指揮を執るのが大野篤史HCだ。2016-22シーズンまで千葉ジェッツを率い、2020-21シーズンには優勝にも導いた名将だが、三遠の指揮官に就任した1年目の昨季は23勝37敗(中地区6位)と決していいスタートを切ったわけではなかった。
そんな中、今シーズンはコティ・クラークやデイビッド・ダジンスキー、大浦颯太らを新たに加え、第25節を終えてリーグ全体2位の勝率を残すなど、快進撃を続けている。三遠を強豪チームへと成長させた大野HCに、今シーズンのチームの進化や選手の成長、チャンピオンシップへの思いなどについて聞いた。
就任2年目 選手の成長「実感持てている」
-今シーズンのチームや選手の成長について
昨シーズンは怪我人が多くて自分たちがどれぐらい成長してるか分からなかった状態で、昨シーズンの経験を踏まえて、選手は成長していたんだなっていう実感は持てています。プレーについては、選手みんなが成長していると思いますし、それよりもチームとしてどういうものを目指して戦っていくのか、何を大切にしなきゃいけないのかっていうところは全員が認識して戦ってくれているんじゃないかなと思っています。
-HC就任2シーズン目になりますが、今シーズン変えたことはありますか?
何も。僕がコーチをやる上では、支えていただいている人に喜んでもらうこと、勝つことにこだわること。その2つなので、それをしっかりやっていってる状況です。
-「三遠のバスケは見ていて楽しい」という声をよく耳にします
自分が見て面白くないものを僕たちのブースターさん、スポンサーさん、地域のみなさんが見て面白いとは思わないはずなので、僕が面白いと思ってるものを皆さんがそうやって喜んでいただけるってことは本当にすごくハッピーですし、それを続けていきたいなと思っています。
-三遠で2シーズン目ですが、三遠での生活はいかがですか?
好きです。本当にのどかですし。僕、石川県出身なので、山も海もあって食べ物も美味しいですし。あとは、このフェニックスがこの地域に根付けるように、そのための一つのお手伝いができるようにそこまでしっかり頑張りたいなと思っています。
強豪との対戦で見えた「危機感」
ーシーズンを通してアルバルク東京や宇都宮ブレックス、琉球ゴールデンキングスなど上位チームとの対戦がありました。チームとして変化が必要な部分はありましたか?
戦術的なものよりもマインドの方。いいシーズンのスタートを切って、自分たちが望むべき場所に今はいる。ただ、これがゴールではないので、これをどうやってゴールまで繋げていくか。やっぱり少しリラックスしている部分も見えますし、満足してる部分も見えるので。そういう空気感が蔓延してしまうと、これ以後の成長というのは望めない。なので、しっかりここでもう1回、自分たちがどこを目指して、ゴールがどこなのか。そのために自分1人1人が何をしなきゃいけないのか。もう少しシリアスに危機感を持って考えていかなければいけない。
ディテールにこだわらなければいけない小さいことほど、自分たちが修正していかなければいけないし、気づかなければいけないし、気に留めていかなければいけない。そういう意識がないと、なかなか自分たちよりサイズがあるチーム、タレントがいるチームに勝つことができないので。僕たちはサイズがあるわけでもないし、タレントが揃ってるチームでもない。だからといってギブアップするのではなくて、その中で自分たちが勝てる場所、自分たちのアイデンティティをどうやって発揮していくか。そういうところにしっかりフォーカスできればいいなと思っています。
ー選手たちにはどんな言葉をかけていますか?
「満足しないこと」はずっといっていますね。(満足すると)そこで成長というものは止まってしまいますし、よくて現状維持(で止まってしまう)。「現状維持だと僕たちが行きたいところには行けないよ」というのは常に彼らにいっていますし、一番は僕たちの試合を見て、また応援したいと思えるゲームをする、それが一番重要だと思っています。
スポーツなので、負けないことはないというのは僕は思っていて。ただ、負けたゲームの後でも、僕たちを応援してくださる方々が、「次もう1回応援したい」「もう1回あの会場に行きたい」と思ってもらえるものをしっかり提供できるように。そういうものを続けていくことで僕たちのチームのカラーだったり、流儀みたいなものができてくると思うので。まず定着させたいなと思っています。
7季ぶりCS進出へ「ディテール」にこだわる
ーチームとしては久しぶりのCS出場が見えてきています。CSを勝ち抜くためには何が必要になりますか?
チーム一つとなって戦わなければいけないですし、1つのポゼッションにこだわっていかなければいけない。1つのボールを取られたことで、自分たちが行きたい場所に行けない、負けてしまうことがある。そういうことを理解してもらわなければいけない。1つのリバウンド、1つのルーズボールだからいいやではなくて、それをこだわりを持って取りに行く。ディテールが、精度が、一番大事だと思っています。
-ファンへのメッセージ
本当にいつも選手を後押ししてもらっているので、次は僕たちが恩返しする番だと思っています。僕が来る前にたくさん悔しい思いもしているでしょうし、1年目も僕が来てたくさん期待をいただいた中でこんなものかと思っていたブースターさんもいらっしゃると思うんですけど。やっとみなさんが望んだところまで今のところ来られていて、まだまだ先が長いので、選手たちの後押しを最後までしていただけたらなと思っています。