課題を乗り越え進化する琉球ゴールデンキングス A東京との激戦を連覇への糧に
アルバルク東京と戦う琉球ゴールデンキングス©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部・琉球ゴールデンキングスは2月3日と4日の両日、アウェイの代々木第一体育館でアルバルク東京と対戦。3日の第1戦は80-91で敗れたものの、翌4日に行われた第2戦は76-74で勝利し、東地区1位のA東京との対戦を1勝1敗で終えた。

 第1戦はオーバータイムの末、80-91で敗戦。桶谷大HC「試合の入りが雑になった。後半はもう少しじっくりやって自分たちのオフェンスをしっかりやる。明日もう1回チャンスはあるのでリベンジできるように準備したい」と第2戦に向けて話し、記者会見を後にした。

 2016年9月22日と23日の両日に代々木第一体育館で行われたBリーグ初年度の開幕戦。そのカードこそが琉球ゴールデンキングス対アルバルク東京だった。今回の対戦はその当時以来、約7年半ぶりの代々木第一体育館での対戦、そして東地区と西地区の首位同士が今シーズン初めて顔を合わせるということもあり、多くのバスケットボールファンが注目していたに違いない。2016年の開幕節では琉球は2連敗に終わり、今節の第1戦も合わせると代々木第一体育館では3連敗となっていた。苦い思い出を払しょくするためにも、第2戦は琉球にとって絶対に負けられない戦いだった。

3ビッグラインナップで好発進「目指しているものができた」

 第2戦、琉球は大黒柱であるジャック・クーリーをスターティングメンバーから外し、岸本隆一今村佳太ヴィック・ローアレン・ダーラムアレックス・カークというビッグラインナップでスタートを切った。

 試合の入りについて「(ディフェンスは)インテンシティを持ってできた。ボールマンプレッシャーやビッグマンらがディナイを張って、(相手の)ハンドオフの位置を上げることができた。自分たちが目指しているものができたと思います」と桶谷HCが語る通り、28得点を許した前日の1クォーターから一転。試合入りからディフェンスの強度を上げ、A東京にターンオーバーを5本記録させるなど、1Q12得点に封じ込んだ。

 ディフェンスからリズムをつかんだ琉球は、2Qには岸本が3ポイントシュートを3本連続で決めるなど勢いは止まらず、前半を47-26と21点の大量リードで終える。また、前半では「スリービッグ」のラインナップを起用していた時間帯にはオフェンスリバウンドを7本記録するなど、インサイドが強力なA東京に対してもアドバンテージを取っていた。

 第3Q開始早々、今村が3Pを沈め、琉球のリードはこの日最大の26点に開く。しかし、A東京も諦めない。琉球のスリービッグのラインナップに対して、A東京はマッチアップゾーンディフェンスを敷くと、徐々に流れをつかみ始める。オフェンスでも果敢なインサイドアタックでファウルを誘い、このクォーターだけでフリースローを10本獲得すると、65-51と14点差に縮め最終クォーターへ。

 第4Q、追い上げを見せるA東京は3Pシュートが決まり始め、残り2分19秒のセバスチャン・サイズのシュートで72-74とついに逆転。しかし、琉球はそこから気迫のこもったディフェンスでA東京に追加点を許さず、残り8秒にローが勝ち越しのフリースローを2本そろえてゲームセット。因縁の場所で8年越しに勝利をつかみ取った。チャンピオンシップ(CS)さながらの緊迫した試合が終わると会場は大声援に包まれ、琉球の選手やスタッフ、会場に来ていたファンは安どの表情を浮かべていた。

 試合後、桶谷HCが「(この試合は)1クォーターで負けてなかったから、僕たちが勝っている」と語ったように、琉球は年明け以降負けた6試合のうち、全6試合で1Qで相手にリードを許す展開となっている。逆に勝利した5試合では1Qで平均7.4得点のリードを奪っており、どれだけ試合の入りが重要かがうかがえる。カークの日本国籍取得によって新たな武器となったスリービッグのラインナップを試合の序盤から起用することにより、強度の高いディフェンスから攻守でいいリズムが作れたことは、CSを見据えるうえで大きな収穫だったといえるだろう。

 課題も残った2試合となった。桶谷HCは勝利のポイントとして「試合の入りと締め」とチームに話していたというが、第1戦は後半のフィールドゴール成功率が32.1%(9/28)、第2戦も同様に30.4%(10/33)と2戦連続不発に終わった。強豪との対戦が続くCSにおいては特に今回の対戦のような接戦になることが多いだけに、試合終盤のオフェンスのブレーキは解決しておきたいところだ。

チームハイ21得点を挙げたアレン・ダーラム(右)©Basketball News 2for1

今村佳太「積み重ねたものをやり続ける力とアグレッシブさを忘れてはいけない」

 地区首位同士の対決に9,000人超のファンが集まり、代々木第一体育館はまるでファイナルのような白熱した雰囲気になっていた。2戦先勝方式のCSでの優勝までの道のりは短期決戦の連続であり、勝ち進んでいけば今ポストシーズンでもこの2チームがぶつかる可能性は十分にある。今村は語る。

 「昨日(第1戦)の負けから今日(第2戦)アジャストできた部分もあれば、まだまだ足りない部分はあります。チャンピオンシップに対しては自分たちが自分たちのバスケットボールをできるかが鍵になります。その中で、特に今日の後半にあったのが、アグレッシブさが足りなくなってしまうと、相手に流れを持っていかれる一つの要因になってしまうので、積み重ねたものをやり続ける力とアグレッシブさを忘れてはいけないなとすごく感じます」

 現在、琉球は西地区1位ながらも2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズや3位の島根スサノオマジックがぴたりと後をつけており、決して油断できる状態ではない。勝ち負けに関わらず、毎試合課題は見えてくる。ただ、その課題の一つ一つをチーム全体で紐解いて解決し、シーズン中に進化を遂げていくのが琉球の強さであり、琉球のバスケットボールの面白さだ。今季はここまでケガ人やラインナップチェンジによるチームケミストリーの構築、新たな武器であるスリービッグの使い方など様々な課題点が見えてきた。連覇への鍵はシーズンを通してそれらの課題を解決し、ケミストリーを高め、チームとして成熟できるかどうか。1シーズンを通して進化を続ける琉球の真骨頂はここからだ。

(吉本 宗一朗)

笑顔を見せる岸本隆一©Basketball News 2for1

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