Bリーグ1部(B1)は2月10日から12日にかけて各地で第22節が行われ、中地区4位のサンロッカーズ渋谷はアウェイのホワイトリング(長野市)で中地区3位の信州ブレイブウォリアーズと対戦。2月11日に行われた第1戦では81-70で勝利。第2戦では、ベンドラメ礼生が終盤に貴重な得点を決めるなど68-65と接戦をものにし、同一カード連勝。第21節広島ドラゴンフライズとの第2戦から合わせて開幕以来2度目となる3連勝とし、中地区5位から1つ順位を上げた。
守備改善で浜中謙HC体制初の同一カード2連勝
今季のB1は下位2チームが自動降格ということもあり、シーズン途中に指揮官の交代やチームの体制を変更するケースが多い。サンロッカーズ渋谷も例外ではなく、開幕当初から「地区優勝」「リーグ優勝」という目標を掲げる中、ポテンシャルを発揮しきれずにいた。平均得点力こそ24チーム中6位の83.4得点としているものの、持ち前の粘り強く激しいディフェンスは鳴りを潜めており、ディフェンシブレーティングでは昨季の108.0(リーグ10位)から114.8(同20位)と悪化している(第22節終了時点)。
「SR渋谷らしさ」を取り戻すべく、伊佐勉元ヘッドコーチ(HC)に代わり指揮官に就任したのが浜中謙HCだった。12月24日と25日の仙台89ERS戦ではHC代行として指揮を執り、第2戦で5試合ぶりの勝利に貢献。その後12月28日の横浜ビー・コルセアーズ戦からは正式にHCに着任したが、仙台戦から2月4日に行われた広島との第1戦までの14戦で3勝11敗とし、平均87失点を記録するなど苦しい戦いが続いていた。
そんな中で西地区上位の広島との第2戦では失点を74に抑え、18点差で勝利。信州との2連戦でも70失点、65失点に抑えるなど、持ち前の粘り強いディフェンスが勝利に結びついた形となった。
信州との第1戦後、浜中HCはディフェンス面での手応えについてこう語った。
「ディフェンスの部分で、選手やスタッフと「なんでこういう穴があるのか」に対して向き合って、それをしっかりと修正し、練習だけではなくて試合中も遂行できているというところがこの2連勝に繋がった要因だと思う」
ベンドラメ礼生も「広島との第2戦もそうだが、ディフェンスというのは僕たちのひとつの武器であって、相手のやりたいことをやらせなかったというのはチームの流れを生むひとつの要因。そこができれば、こうやって自分たちらしい試合ができるということを学べていると思う」と手ごたえを口にした。
また、第1戦の勝利によりチームB1通算200勝を記録。そのことに関して浜中HCは「僕らだけではなくて以前所属されたスタッフの方、プレーヤーの方が成し遂げた偉業に自分たちが新たな1ページを加えられたなということも感じている。今日の1勝というのはサンロッカーズファミリーにとって大きな1勝だったのかなと思う」とコメント。
ベンドラメも「200勝に関しては意識していなかった。ただ、ここで200勝を迎えられたというのは、僕もプロになってずっとサンロッカーズでやってきて200勝全てに関わってきているので、そういった意味ではすごく感慨深いというか、200勝もしたんだなという気持ち」とほほを緩めた。
関野にマカドゥ 層の厚さが勝敗を分ける
層の厚さも勝敗を分けたポイントだった。
攻撃面では関野剛平が14得点、ジェームズ・マイケル・マカドゥが12得点マークするなど68得点中ベンチからの得点で32得点を記録。信州ベンチは15得点だっただけに、SR渋谷にとって大きなアドバンテージとなったことは間違いない。
守備面でも高い強度でプレッシャーをかけ続け、信州から「14」のターンオーバーを誘発。先発、控えに関係なく全員がエナジーを高く保ちながら、気迫のこもったディフェンスを披露していた。チームのアイデンティティともいえるタイムシェアの効果も光り、コート上にいる5人が常にフレッシュな状態で高い遂行力を見せていた。
「スタッツ上ではお互いのディフェンスがぶつかり合ったゲームで、我慢強さで少し自分たちが点数的には勝ったのかなと思うが、大きな違いという部分ではベンチポイントがスタートで出た5人と5割5割を占めるような点数を取れたという部分。サンロッカーズにスーパースターはいないが全員がチームにプラスになる存在、一人ひとりがそういった存在であるということを証明できた試合だった」(浜中HC)
まさに全員バスケでつかみ取った連勝だった。
CSは気にせず「現在をどれだけ大切にやれるか」
信州戦の2連勝により中地区4位に順位を上げたSR渋谷。首位の川崎ブレイブサンダースや2位の横浜BCとのゲーム差は「7」になり、チャンピオンシップ出場への希望も見えてきた。
少しずつ状況が好転してきたSR渋谷だが、浜中HCに気のゆるみは一切ない。
「正直、『チャンピオンシップに向けて』ということはあまり選手の頭にも入れたくはない。というのは『狙えない位置だから』とかそういうことではなくて、“長期的な目標”というのもあるが、やはり目の前の“短期的な目標”、一試合一試合、ひとつの練習をどれだけ一生懸命サンロッカーズらしくやり続けられるかというところに尽きると思う。
その一つ一つの積み上げが“長期的な目標”の達成になると思うので、あまりプレーオフに向けての意気込みというよりは、一日一日、現在をどれだけ大切にやれるか。過去からどれだけ振り返って今をよりいいものにするかということを選手に伝えているので、そういうメンタリティーでやっていきたいと思う」
バイウィーク中に取り組む課題については、こう答える。
「僕自身としてもどういう形でチームがよくなるのかというのは、少しずつ見えてきたところはある。バイウィークを使って、精度を上げてチームとしての基盤をもっともっと頑丈なものにしていく時間にしたいと思う。チームアクティビティを積極的に行ってバスケットだけではなくてチームビルディングの方も積極的に行ってサンロッカーズの強さである『ひとりひとりが』というところを高められればと思う」
指揮官の交代という困難を乗り越え、3週間に及ぶアウェー遠征を3連勝という最高の形で締めくくったサンロッカーズ渋谷。本来の姿を出せるようになってきたことで、終盤戦への期待が高まる。短期的な目標を積み重ねた先に見えてくるのは、昨シーズンたどり着けなかったCSの舞台。混戦模様の中地区だけに、目の前の試合に全力で向き合っていけばサンロッカーズ渋谷がCS争いに絡んでくる可能性は十分にあるはずだ。
(芋川 史貴)