Bリーグ1部(B1)は2月10日から12日にかけて各地で第22節が行われ、大阪エヴェッサはアウェー(京都市体育館)で京都ハンナリーズと対戦。11日に行われた第1戦では81-68で勝利、翌12日の第2戦では82-89で敗れた。1月18日の対戦を含めると、京阪ダービーの成績は1勝2敗。第22節を終えて、大阪は西地区5位、京都は同地区7位でバイウィークを迎えることになった。
第1戦、序盤からお互いに一歩も譲らぬ攻防を繰り広げるも、大阪が39-37と2点リードで折り返す。後半は鈴木達也、合田怜、木下誠の3ポイントシュートで得点を重ねると、徐々にリードを広げ81-68で勝利をつかんだ。この試合では、木下が15得点(3P 3/5、 成功率60%)2アシスト、カイル・ハントが14得点8リバウンド、ディージェイ・ニュービルが11得点5リバウンド6アシスト、合田が13得点を記録した。
翌第2戦は、前半こそ48-39と大阪がリードしたが、後半に入ると今季最多となる3101人の入場者の後押しを受けた京都が踏ん張りを見せる。マシュー・ライトやシェック・ディアロの要所で得点を重ねるなど京都が後半に流れをつかみ、ホームで前日のリベンジ。82-89と接戦を落とした大阪として、バイウィーク前に悔しい敗戦となった。この試合では木下が26得点(3P 6/6 、成功率100%)4アシスト、ショーン・オマラが20得点7リバウンド、カイル・ハントが12得点4リバウンド3アシストを記録した。
「タイムマネジメント」と「ディフェンス強度」の改革
今季はマティアス・フィッシャー氏をヘッドコーチ(HC)に迎えた大阪。新体制になってしばらくの間は新しいシステムに慣れるのに時間を要したという。新指揮官が改革を目指したのは「タイムマネジメント」と「ディフェンス強度のアップ」の2つ。シーズンも後半戦に突入し、少しずつではあるが改革の成果が見えてきている。
まずはタイムマネジメントについて。京都との第1戦ではロスター入り12選手全員が出場し、プレータイムをシェア。一番出場時間が長かったニュービルでも30分3秒で、その他の選手は27分以下にプレータイムが抑えられていた。チーム全体でタイムシェアすることにより、疲労の溜まっていないフレッシュな選手を常に出場させられること、そして主力選手の体力の温存が可能になる。翌日にも試合を控えるチームにとって、疲労を溜め込みすぎないようにプレータイムのマネジメントすることが重要だとフィッシャーHCは話す。
また、ディフェンスの強度を維持することも今季の課題の1つだったという。昨季は平均82.7失点と対戦相手に大量得点を許す試合もしばしばあったが、今季は38試合を終えて平均77.9失点と約5点減少している。このことについて木下は「ディフェンスにフォーカスしだしてから、チーム全員でディフェンスするという風になってきているので、(試合に)勝てるようになった」と手ごたえを口にする。勝利した第1戦では京都を68得点・フィールドゴール成功率40.3%・3P成功率20.0%に抑えるなど、素晴らしい守備が随所に光った。
第2戦で自己最多26得点 木下誠の成長光る
在籍2シーズン目となる木下は、大阪出身の25歳。大阪学院大学在籍時に名古屋ダイヤモンドドルフィンズと特別指定選手の契約を結び、卒業後にプロ契約。そして2021-22シーズンより、地元へ戻ってきてプレーを続けている。第22節では両日ともチーム最多得点でけん引。第2戦では3P6本中6本を沈め、26得点と躍動。得点と3P成功数においてキャリアハイを更新した。
第1戦の試合後、記者会見場に現れた木下。校長のシュートタッチについて質問が及ぶと、「(第2クォーター残り4分23秒に)1本目のコーナー3Pを決めたときに今日は(シュート)タッチがいいなと思いました。そこからはもう何も考えず(パスが)来たら打つという風に、練習通りにやれたと思います」と納得の表情で語る。
また、1番・2番ポジションの両方をカバーできる「コンボガード」の木下とニュービルについて相手にとって脅威になるとフィッシャーHCは話す。
「(木下は)ボールハンドリングのスキルがしっかり備わっており、1番・2番どちらもできる選手だと思っています。また、視野もすごく広いですし、サイズ(身長)もあるので、ディージェイと一緒に1番・2番に起用することによってボールをプッシュできるし、ピックアンドロールも使える選手たちだと思っています」
木下自身もベンチからスタートすることによって試合の状況をよく理解してコートに立つことが出来ているとし、「ディージェイへのプレッシャーはどこのチームも強いので、ディージェイ以外のところで(得点を)クリエイトできるようにするとなると、僕がやらなきゃいけないと思っています。それをベンチから出てきて(プレーメークをする)というのがやはり今一番の重要な役割と考えています」と新たなチャレンジへ意気込んでいる。
ニュービルをプレーメーカーに「他の選手を生かすことも」
昨シーズンはリーグ2位の平均23.1得点、今シーズンは第22節終了時点でリーグ15位の平均17.9得点とリーグ屈指のスコアラーとして知られるニュービル。当然、対戦相手はニュービルの得点を抑えようとあの手この手で対策を打ってくる。京都戦でも満田丈太郎をはじめとするディフェンダーたちがニュービルの前に立ちはだかった。
フィッシャーHCはニュービルに得点だけではなく違う役割でも貢献を求めていると話す。
「自分にとっては、ディージェイ(ニュービル)にスコアラーになってほしいというより、安定してソリッドなディフェンスをしてくれる選手になってほしいと思っています。また、チームを落ち着かせる・整える役割というのも彼の仕事ですし、もちろん得点もしてほしいですが、それは必要なときにしてほしいと思っています。また、うちのチームの選手はディージェイと一緒に出ることでいつもよりもよりうまくプレーできる傾向があるので、他の選手を生かすことも彼の役割のひとつだと考えています」
実際に、京都との2戦では11得点・5得点と両日とも得点は抑えられたものの、第1戦では5リバウンド6アシスト2スティール、第2戦では4リバウンド6アシスト2スティールと得点以外の部分でチームに貢献していた。元々プレーメークが得意なニュービルの周りには木下や合田ら得点力がある選手がそろっているだけに、バランスよく得点できることは大阪にとって大きな武器になるはずだ。
フィッシャーHCは「ディージェイだけのチームじゃないということが今日(第1戦)の試合で見てもらえたと思います」と納得の表情。ニュービルが黒子に徹することによって他の選手たちがさらに活躍している現状をアピールした。
昨シーズンは21勝36敗(勝率36.8%)と不本意な結果に終わった大阪。今シーズンは強豪ひしめく西地区で試行錯誤しながらも、18勝20敗(勝率47.4%)と着実に変革が形になってきている。タイムシェアリングやニュービルの新たな役割によってオフェンスのバランスはよくなり、ディフェンスの強度も確実に増してきている。エースのニュービルに加え、木下や合田、ケガから復帰した橋本拓哉ら役者は揃っているだけに、新たなスタイルが浸透すればさらに勝ち星を積み重ねていけるだろう。バイウィークが明けると、いよいよ終盤戦に突入するBリーグ。激戦西地区で台風の目になるのは大阪エヴェッサかもしれない。
(田名 さくら)