今月21日から23日にかけて行われた天皇杯2次ラウンド。B 3リーグのトライフープ岡山は22日、大分県のレゾナック武道スポーツセンターでBリーグ1部の長崎ヴェルカと対戦し、71-75で惜敗。天皇杯は2次ラウンドで敗退となった。
3次ラウンドに進めなかったとはいえ、格上の長崎をあと一歩まで追い詰めた岡山。試合開始から激しいディフェンスと濱田貴流馬のシュートで流れを作り、前半にはリードする時間帯もあった。後半、長崎の狩俣昌也の連続得点や川真田紘也の得点で引き離されるも、終盤には1点差まで迫る。最後まで食らいついたものの、一歩及ばず4点差で敗れた。
日本代表選手もロスターに名を連ねる長崎を相手に、白熱した試合を演じたトライフープ岡山。2023−24シーズンの成績は20勝32敗で18チーム中11位、勝率は4割に満たない苦しいシーズンとなった。今シーズンは2026-27シーズンから始まる新リーグ「B. LEAGUE ONE (基準売上4億円、平均入場者数 2,400名)」への参入、そしてB2昇格を目指すために重要なシーズンとなる。
そんな中、27日から開幕したB3リーグ2024-25シーズン。B1の長崎と好試合を演じるなど、シーズン開幕に向けて岡山への期待は高まっている。天皇杯の1週間前に行われたメディア向けの公開練習終了後、大森勇GM兼HCが今シーズンにかける思いなどを語ってくれた。
高い前評判「あとは僕たちがやるだけ」
−今シーズンのチームの雰囲気は?
みんなまず仲いいというのと、いい奴ばっかりで外国籍もチームを重んじるというか、チームメイトを大切にしてくれるような選手が多い。サム・ティミンズとか結構日本語を喋れるんですよ。普通に会話は日本語でできるぐらい喋れたり、アレックス(・マーフィー)も日本での経験があったり、ファイ・サンバは日本語ペラペラなのでオフコートですごく仲良いです。かと言って、練習中とかに遠慮するわけではなくキャプテンの髙畠(佳介)に対して、例えば(佐藤)大成とか(岡田)陸人とかにファウルに近いようなディフェンスをしたり、競争心は失わずに来ているので。すごくチームとしては雰囲気はいいです。
−昨シーズンは初めてのGMとHCを兼任した。ご自身の評価は?
初年度ということもあって、やってみないと分からないことも正直いっぱいあったシーズンだった。編成も含めてなんですけど、なかなか自分が思っていたように進まないところもあったりした。自分の中で反省点なんですけど、後半から勝ち始めた要因としても自分が信じていることとかチームにとっていいかなと思うところ、そこを改めて突き詰め始めて勝てるようになった。自分が目指しているところとか選手が頑張っているところとか、それはやっぱり間違っていなかったなと思うところはある。全体として結果としては本当に反省が多いですけど、今シーズンに生きるようなシーズンだったのかなと感じています。
−チーム作りを行う中で、「揺るがないもの」は
僕は「ディフェンス」が大事だと思っているので、とにかくディフェンスをチームでやる。そこは一番意識しているところ。ヘルプに出たら次の人がローテーションに行かないといけないし、オフェンスで言えば自分に2人ディフェンスが来ているんだったらノーマークの選手にパスをしなきゃいけないしというところはすごく意識している。
あとはとにかくチームには「プロフェッショナル」になってほしい。選手もそうですし、スタッフもそうですし、やっぱり良いチームになってほしいので、結果を残すためには、やはり必要なんじゃないかなと。練習のときもそうですし、練習以外のところもそうですし、もちろんプロフェッショナルとしてどうあるべきかというところをキャプテンを筆頭にチームに言っている。プレッシャーになってほしいというところと、とにかくチームで1点でも多く取って勝つというところ、この二つが一番チーム作りとしては意識しています。
−ACからHCになり、見えてきたものは
ACのときに意識していたのは、とにかくいろんな選択肢をHCに投げること。あとはHCがそれを判断していくということなので、僕らはできるだけ多くの選択肢を投げることを意識していました。結構気楽に「これどうですか」って試合中でも投げていたんですけど、やっぱりHCになるといろんなことを考えて決断していかなければいけないので、全然景色が違うかなと。
僕はアグレッシブにトラップに行ったり、仕掛けていくのがいいんじゃないかとアシスタントコーチ時代には思っていて、前任の比留木はソリッドに行くスタイルだったので。逆にそういう刺激を入れた方がいいんじゃないかということで僕も結構提言をしたんですけど、いざヘッドコーチになるとリスクを取っていくのも結構難しいなっていう。すごく感じます。自分の判断が(結果に)直結するので、答えのない判断を連続してやらなきゃいけない。すごく大変なところと、判断する上で何かしら自分の中で「この軸で決める」みたいなものは持っていなければいけないなとすごく感じました。
―SNSなどを見ていると今季の岡山は前評判がすごく高い印象があります
前評判もおかげさまで高いので、あとは僕たちがやるだけです。
―エゴサーチはされるんですか?
評判を見たいので、たまに「トライフープ」で検索して。期待していただいているなとか、たまに「これで勝てんかったらもうコーチのせいやろ」みたいな(投稿)とか「確かにそう見えるよな…」と思いながら(笑)。「頑張ろう」と思いながらやっています。
秋田・前田HCや三遠・大野HCから学んだチームづくり
―昨シーズンは秋田ノーザンハピネッツの前田顕蔵HCにもご相談されたとお聞きしました。どんなお話を相談されたんでしょうか?
シーズン前は顕蔵さんに(GMとHCを兼任することに)なりましたって言って、「そうか」みたいな感じで。リクルートの仕方とかは内緒なんですけど「こうやったらいいよ」みたいなことを教えていただいて。それで結構、正直うまくいっているところはあります。シーズン中、なかなか勝てなかったときにも連絡して「結局、お前が信じていることをやれよ」みたいな(アドバイスをもらった)。信じていることをやるために周りの人にこうしていった方がいいんじゃないか、とか。バスケの内容もこうしていった方がいいんじゃないか、みたいな話はしていただいて、それはすごく自分の中で助けになったし、支えられました。
―昨シーズンCSの前に三遠(ネオフェニックス)の方にもいらっしゃって練習にも参加されたとお聞きしました。近くで見た大野篤史HCはどういう印象でしたか?
オーラがありますよね。出で立ちもそうですし、緊張感があるというか。洗練された空気で練習も進んでいっていましたし、別に声を荒げることもなく、プラスアルファの部分はアシスタントコーチ陣をすごく信頼して任せる部分もあったり。クールな感じですけど、気さくに話していただいたり、人としての魅力がすごくある。男気というか。僕、大村スキルコーチとずっと昔から付き合いがあるので、その関係もあって行ったんですけど、やっぱり大村さんとかももう大野篤史HCとずっとやっていきたいという感じで、惚れ込んでいた。やっぱりすごい人なんだなと感じました。
―愛知セントラルカップでの大野篤史HCの采配はどうでしたか?
はい、見ました。三遠のバスケットを見に行って良かったなと思います。改めて答え合わせというか、僕たちもああいうバスケをしたいなと思いましたし、外国籍選手が出ていない日本人だけの時間帯もありましたし、「ON1」の時もありました。それでも(相手の)「ON2」に対して全然見劣りのないチームだったので、完成度がすごく高いなと思いました。
―オフシーズンはどのように過ごしましたか
シーズン中はほとんどお酒を飲まないので、オフは幸いいろんなところに誘っていただいてお酒を飲んだり、いろんな人と喋ったりしました。それこそ三遠も行かせてもらいましたし、愛知にいたのでいろんな人と会いました。「88キャンプ」という同級生のキャンプも仲間に入れてもらったりしたので、彼らとお酒を飲んで喋ったり、すごく良かったです。
―「88キャンプ」は鹿児島で子供たちに教える立場で行かれたんですか?
全然面識がなかったんです。同級生と言っても彼らは、ほんまにトップを走っている人たちなので。同級生たちがそういった日本の未来の子供のためにやっていくということを聞いて、僕は微力ながら岡山でそういう活動をしていたので、「何か一緒にできないかな」ということで。知り合いづたいに(橋本)竜馬に1回連絡して、「こういう者です」と。「同級生というご縁もあって何か参加させていただきたいんですけど」ということで、参加が決まって。
みんな選手なので、話し合ってちょっとしたメニューをやるというよりは、本当に彼らが今トップリーグで使っている技とか、考え方とかというのを実際に彼らと一緒にプレーをしながらやれるクリニックがいいんじゃないかなと。ありきたりなものではなくて、彼らはどんどんプレイヤーとして、立場的に僕はコーチだったので、(クリニックの)メニューを紹介して、とか「こうやっていきましょう」ということを言っていました。
―その時の活動から得られたものは
めちゃくちゃありましたね。自分がチームに言っていることとかを彼らも同じようなことを考えたりしていて。僕らは36歳なんですけど、36歳になってもまだB1のチーム求められている。それはバスケもそうですし、取り組み方もそうですし、本当に彼らしか分からないこともあります。僕らが想像していろんな選手と話してチームに落とし込んだりしたことも、実際に彼らはそういうふうに取り組んでいたり、それ以上に取り組んでいたり。実際に一番上のレベル、日本で一番上のレベルで活動している彼らの声が聞けたことは、本当に今シーズンにすごく生きるような時間だったかなと思います。
「いい選手来てくれた」ホームでPO開催目指す
−GMとして選手をリクルートする際に人柄も重要視していると仰っていましたが、新加入選手の人柄を教えてください
いろんな選手が来てくれて、トライアウトで小池(文哉)が来たんですけど、若手で、かわいいキャラで盛り上げてくれたり、(高橋)幸大とか向井祐介と似ているんですけど、黙々とストイックに取り組んでくれる。濱田貴流馬もどちらかというと、あんまり口数が多い方じゃないですけど、いろんなところに目が行き届いたり、かわいいキャラ。みんないい奴なんですけど、いろんな特徴があって、(岡山にきてくれて)良かったなと思います。
―新加入選手に期待することは
ポイントガードでいけば濱田貴流馬。対戦相手でいた時、結構やられていたので、良い選手だなと思っていた。(岡山に)来てみると、対戦相手で見てたより良い選手だった。「こんなにいいんだ」という感じで。期待を超えてきてくれるようなプレーをしてくれているので、クラッチタイムとかも任せれるような選手。オフェンスに注目が行きがちですけど、ディフェンスもすごく頑張っているし、手が長いのでディフレクションなどができることも魅力の一つかなと。
ビッグマンのところでいけばサム・ティミンズ。シンプルにめっちゃ大きいので(211cm/119kg)、すごいです。練習中からあの高さがあるのはオフェンスでは武器ですし、ディフェンスの時にどう守るかとか、ああいう選手からリバウンドをどうやって取るとか。練習中から体感できるのでチームにプラスになっています。昨シーズンでいうとT(ターネ・サミュエル)が5番をやる時間帯が多かったんですけど、Tが4番に入って機動力が出たり、4番のちょっとフィジカルがない選手に対してアドバンテージが取れたりというのがあるので、いいですね。あと性格がめっちゃいい。日本語も喋れますし、文句も全く言わないですし(笑)。忠実にやるし、チームメイトに声もかけるし、性格もいい選手。実はTが紹介してくれたんです。「ニュージーランドにもすごい奴いるぞ」みたいな感じで。
アレックス・マーフィーは(日本での)経験もありますし。去年はウイングをスペインでやっていたので、ファイ・サンバと3人出られるタイミングとかウイングを任せられる選手でありますし、めっちゃ性格が良いので、陽気な感じで。年齢も外国籍の中では上の方なので、若い選手に対して喋ってくれたり、その部分でもすごくチームのプラスになっています。
―髙畠佳介キャプテンに期待することは
昨シーズンはチームをどう作っていくかを一緒に選手に働きかけたりという部分を(髙畠に)お願いしていた武運もあったりして、その中で自分のプレーもあったので、すごく負担が大きかったと思う。(今シーズンは)いい選手も入ってきてくれたり、 2年目で他の選手たちもすごく取り組み方が良くなったり、特にチームづくりのところで大きくウェイトが乗っているわけではないので、自分のプレーに集中して活躍してほしいなと思います。クラッチタイムとかでしっかりチームを勝たせれるようなプレーをしてほしいなというのが一番なので、それを含めもちろんプロフェッショナルとしての姿勢を選手たちに伝え続けていってほしいなというところはすごい期待してるところです。
―チームの仕上がりは
結構いい感じで来ているんじゃないかなと思います。もちろん噛み合っていかないといけないところもまだまだあるんですけど、完成度としては良い感じできているかなと。やってみないと分からないところもあるので、不安でもあります。良い選手が来てくれて、周りからの期待も高いですし。
―どんなチームに仕上げていきたいですか?
岡山のみなさんに応援されるチームでありたいなと思います。それには毎日の練習が本当に一番大事で、毎日の練習でいかにいいチームになるためにプレーするかが大事。とにかくシーズンが終わる頃には目標達成もそうですし、チームとしてプロフェッショナルな集団になれていなければいけないかなとすごく感じています。
―最後に、今シーズンのチームの目標を教えてください
目標は「B3を優勝してB2に行く」。岡山のみなさんの前で昇格や優勝を決めたいということで、具体的にはチームには「40勝」を目指して、とにかく岡山でプレーオフが開催できるように。それはチームとして本当に目指しているところではあります。
(榊原かよこ)