バスケ男子日本代表、カザフスタンに25点差快勝 最年少・河村勇輝が守備の”スイッチ”入れる
前半、ゴールにアタックする河村勇輝©Basketball News 2for1
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 FIBA男子バスケットボールワールドカップ(W杯)2023アジア地区2次予選のwindow4は8月30日、F組の日本(FIBAランキング38位)対カザフスタン(同68位)を沖縄アリーナで行い、 日本が73ー48で快勝した。

 1次予選の成績を持ち越して日本は通算3勝5敗となり、F組で6チーム中5位。チーム最年少21歳のポイントガード河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)が第1Qで守備の”スイッチ”を入れ、チームディフェンスが機能して相手に24ものターンオーバーを誘発した。


 約8,000人を収容できる沖縄アリーナは、日本、フィリピン、インドネシアの3カ国で行われる 来年本戦の一会場となっている。この日は平日午後6時の試合開始にも関わらず5,337人の観客が詰め掛け、1年後に向けて沖縄でも徐々に盛り上がりが生まれていることがうかがえる試合となった。日本は開催国枠で既に本戦への出場権を得ている。

序盤は重い展開も河村がチームの起点に

 日本は富樫勇樹(千葉ジェッツ)、馬場雄大、比江島慎(宇都宮ブレックス)、井上宗一郎 (サンロッカーズ渋谷)、帰化枠のニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)でスタート。前回2019年のW杯以来の代表復帰となったファジーカスとの連係不足もあり、「新しいメンバーもいる中でコンビネーションが一番の問題だった」(トム・ホーバスHC)と序盤は重い展開に。ゴール下へのカバーが遅く、簡単に得点を許す場面も目立った。


 流れを変えたのは、開始5分ほどでコートに入った河村だ。持ち味のへばり付くような激しいディフェンスで前線から相手ガードに1対1でプレッシャーを掛けると、それに呼応するように他の選手も強度を上げる。


 ウイングには馬場や西田優大(シーホース三河)、須田侑太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、ビッグマンに対しては張本天傑(名古屋D)や井上が体を張り、簡単に得点を許さない。しかし、攻撃で3ポイントの確率が停滞し、27ー27のロースコアで折り返した。

守備からリズムを作った河村©Basketball News 2for1

代表復帰ファジーカスが攻撃のリズムつくった

 後半に入ると、ファジーカスがオフェンスでチームにフィットし始める。前半はトップの位置でボールをもらってからのミドルシュートやピック&ロールが目立ったが、第3Qからはローポストにも入るようなり、スペーシングが改善してチームオフェンスが向上。井上が連続でスリーを沈めたり、張本の好ディフェンスから速攻に走った吉井裕鷹(アルバルク東京)がダンクを叩き込んだ りして流れを掴み、3Qで49ー37と2桁リードを奪った。


 最終第4Qも守備の強度を維持し続け、度々速攻に走ってさらに差を広げた日本。チームの強みである3ポイントは成功数が7/35(20.0%)と最後まで確率は上がらなかったが、比江島や西田らが着実に追加点を挙げ、危なげなく逃げ切った。

後半、オフェンスのリズムを作ったニック・ファジーカス ©Basketball News 2for1

西田はチームハイ13得点 馬場も11得点で続いた

 得点は西田が13点でチームトップ。馬場11点、井上9点、ファジーカスと比江島が8点と続いた。最年長37歳のファジーカスは機動力の低さから1対1で容易に得点される場面もあったが、リバウンドでもチームトップの8本を奪い、旧知の仲であるホーバスHCは「(スリーを多用する) このオフェンスはニックにピタリと合うかなと思います。まだ(本戦で)どの選手をピックアップするかは分からないですけど、ニックがもう一回ジャパンのユニフォームを来てプレーすることは日本のバスケにとって良いことだと思います」と活躍を称えた。

西田優大はチーム最多の13得点 ©Basketball News 2for1

ホーバスHC、河村に”チクリ” 「マーク下がったら打たないと」

 15分54秒の出場時間にも関わらず、7得点、7アシスト、5スティールと攻守でチームをけん引した河村は「前半は自分達らしいバスケができずにいましたが、ニックのローポストが機能して、 守備の強度を上げたことでターンオーバーも奪えた。前半は自分達の無駄なターンオーバーも多かったですが、ハーフタイムでしっかりとチームで話し、後半は僕たちらしいバスケができました」と振り返った。

 本番では”ホームコート”となる沖縄アリーナ。琉球ゴールデンキングスの試合では、よく選手たちが「沖縄のファンはいい守備をすると盛り上がってくれる」と言う通り、この日も河村や張本らが激しいディフェンスを披露したシーンが最も観客席を沸かせた。それを念頭に、河村が続けた。


 「こういう大きなアリーナでバスケができることはすごくモチベーションになるし、本当にやっていて楽しかったです。沖縄というバスケ熱が高い街でたくさんの方に見に来てもらい、すごく”ホーム”を感じることができました。ワールドカップで沖縄、そして日本の皆さんと一緒にバスケをしたいので、自分もその場に立てるように頑張りたいです」。


 ただ会見の最後、同席したホーバスHCから「彼はこの3カ月ですごい伸びた。特別なディフェンス、速さ、自信もある。でも問題は相手マークマンが下がった時に打たなかった。それは直さないと次のレベルには行けない」と、以前から指摘されている課題を”チクリ”。間髪入れずに「頑張ります」と言った河村に対し、ホーバスHCが「頑張ってください」と返し、2人が笑って顔を見合わせると、会見場が和やかな空気に包まれた。

試合中、河村(左)に指示をするトム・ホーバスHC ©Basketball News 2for1
会見中、笑顔を見せるホーバスHC(左)と河村 ©Basketball News 2for1

馬場11得点も前向く「悪い中でも収穫」

 代表の主力を担う馬場は、チーム最多27得点を挙げた8月26日のイラン戦に比べるとおとなしい印象だったが、「全部がいい試合になるわけじゃないので、内容が悪い中でもチームとしてプレーできたのは収穫。今後も悪い流れが来ることは絶対にあるので、そういう時に一つ一つのプレーを積み重ねていければと思います」と前向きに語る。「ファイブアウト」でスリーとドライブを多用するホーバスHCのバスケにも徐々に馴染んできているようだ。


 相手ビッグマンをマークし、縁の下で体を張り続けた張本は「限られた時間の中で自分の役割をどれだけ徹底できるかが大事。それが自分の良さでもあるので。前半はちょっと代表が久しぶりで ターンオーバーもあったけど、後半はチームとして修正できて良かったです」と満足の表情を浮かべた。

「内容が悪い中でもチームとしてプレーできたのは収穫 」と語る馬場©Basketball News 2for1
インサイドで体を張って貢献した張本天傑©Basketball News 2for1

沖縄“凱旋”の須田「熱さも感じられてすごくうれしい瞬間」

 須田は2017~19年の2シーズン琉球に所属したため、この日は沖縄のファンも客席に見えた。「キングスを離れてもずっと応援し続けてくれる人もいますし、その方々の前で日の丸を背負ってプレーできて、選手冥利に尽きます。改めて沖縄のファンの熱さも感じられたし、すごく嬉しい瞬間でした」と感慨深げ。代表戦でキャリアハイの得点を決めるなど好調を維持する須田だが、W杯の本戦に向けては「意識し過ぎることなく、目の前の合宿や試合を一つ一つクリアしていくことが大事だと思います」と愚直に語り、その上で「まだ課題はめちゃくちゃあります。スリーも警戒されてくると思うので、しっかり駆け引きに使いながら、シュートの バリエーションも増やしていきたいです」とさらなる向上を見据えていた。

日本代表でのプレーに磨きをかける須田侑太郎©Basketball News 2for1

11月にwindow5 3ポイントやスタートの悪さの改善を

 今後、日本は11月にある2次予選window5に臨む。今回は守備から流れを掴んで快勝したが、 カザフスタンは個々の高さや強さ、シュート力ともアジアで高いレベルにあるとは言い難く、そ の相手に対しての出足の悪さや3ポイントの低確率など、日本が世界の強豪と戦うにはまだまだ課題は多い。逆を言えば、その分伸びしろも多いということだ。


 様々な選手を試しながら代表チームをブラッシュアップしているホーバスHCが、最終的にどこまでチーム力を底上げし、どのようなメンバーで本戦に挑むのか。1年後、沖縄アリーナに降り立つ「AKATSUKI JAPAN」の姿が、今から楽しみで仕方がない。

(長嶺真輝)

【著者プロフィール】
長嶺真輝(ながみね・まき)…沖縄を拠点とするフリーランス記者。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。元バスケ日本代表の渡邉拓馬選手に似てると言われたことがある。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

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