Bリーグ2部(B2)は11月29日から12月1日にかけて各地でレギュラーシーズンの第10節が行われ、東地区・信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリングで西地区の神戸ストークスと対戦。第1戦を105-72、第2戦を101-73と快勝し、連勝で同節を終えた。同一カードの連勝は10月26日、27日に行われた福島ファイヤーボンズ戦以来で、実に1か月ぶりとなる週末2連勝を果たした。
準備不足で1戦目落とす 三ツ井利也「個人にベクトルを向けないと」
福島戦後に信州が同一カードで連勝ができなかったのは、山形ワイヴァンズ、富山グラウジーズ、青森ワッツ、バンビシャス奈良の4チーム。いずれの試合も第1戦に敗れ、第2戦に勝利をつかむ展開となっていた。
さらに詳しく見ていくと、富山戦は傾向から外れているものの、他3試合はいずれも第1戦に立ち上がりの悪さが目立ち、それを引きずって接戦を落とすパターンだった。しかし、いずれの試合も翌日の第2戦では大差で白星を掴んでいる。修正力があるといえばその通りだが、この期間中、勝久マイケルヘッドコーチ(HC)はたびたびエナジーと遂行力の低さについて口にしていた。
「エナジー」は抽象的な概念ではあるが、選手一人ひとりの意識に委ねられる部分が大きい。チームとしてプレーの決まりごとを遂行する以前に、試合中にどういう姿勢を見せるかという個人の問題になってくる。
この「個人」という部分に関して、石川海斗と三ツ井利也はそれぞれ次のように話していた。
「やっぱりコーチのバスケットは、単に一対一ではなく、ズレの中で一対一をしていく。確かにペリン(ビュフォード)だったりテレンス(ウッドベリー)だったり、得点を取れる選手が多いけれど、例えば僕が相手でやっていて、そこの一対一だけと思っていたらやっぱり守りやすい。けれど、僕らが負けている試合はそういうシチュエーションが多い。それは彼らが悪いのではなく、チームとして彼らにどのように一対一をさせていくのか。それをコーチだけではなく、もっと全員がコミュニケーションを取っていかなきゃいけない」(石川海斗、11月26日の奈良戦後)
「前日の練習の準備とか、チームの準備以外の個人の準備っていうのが僕的には甘いと思っていました。試合の前日の練習があまり良い形で終わってないときは、大体その次の日の土曜日(第1戦)に良い入りができてないっていう印象で。実際、ゲーム前の練習があまり良いものではなかったというのは間違いなかったですし、チームの準備もそうですけど、個人個人がどれだけ試合に向けて準備するかであったり、試合前のアップで誰がスタートで出ても足を動かせるぐらいのウォーミングアップがしっかりできているか。個人個人にベクトルを向けなきゃいけない状況はあったと思う。そこは、トレーナー陣にも腹を割って話をしました」(三ツ井利也、11月30日の神戸戦後)
石川は戦術面を中心に、三ツ井は試合に臨むアプローチの部分を中心とした指摘という違いはあったものの、総じていえるのは個人としてもチームとしても準備が足りていなかったということだ。実際、負けた後の第2戦後には4試合で平均21.3点差をつけて圧勝しており、戦術やエナジーを含めてチームとして高いレベルでプレーできていた。
2戦で18アシスト ビュフォードがチームを生かす
このような課題を抱えている中、神戸戦は両日とも100点ゲームで、神戸の点数も70点台前半に抑えての快勝となった。ディフェンス面では前線から激しくプレッシャーをかけ、オフェンスでは石川が言及していたビュフォードを中心に多彩なチームオフェンスを披露。ビュフォードが自ら攻める部分もあれば、チームメイトへのアシストも見られるなど、よりオフェンスが機能していた。
チームとして機能していたことはスタッツを見ても明らかだ。神戸との第1戦ではビュフォードは18得点11リバウンド8アシストを記録。第2戦では27得点10リバウンド10アシストとトリプルダブルを記録している。前述した第1戦を落とした4試合では、ビュフォードの平均アシスト数は3.8にとどまっており、逆に第2戦で勝利した4試合では平均7.5アシストを記録している。アシストはチームプレーからしか生まれないスタッツであり、ビュフォードの得点だけではなく、アシストも伸びている状態がチームにとっても望ましい展開であることは間違いない。
指揮官もビュフォードの活躍がチームに与える影響について「お互いをどんどん知るプロセスっていうのは当然ありました。何でもできる選手であればあるほど、やろうと思えばいつだってアイソレーションで一対一ができたりする。本当に青森の第1戦目が一番良い例なんですけど、本人もチームメイトを生かすとき、自分がアグレッシブにやるときのバランスを取ろうとしたり。やっぱり毎週学びがあって、あのときはどういうときにどっちの選択をするっていうところで、あまりチームバスケットができなかった」とこれまでを振り返る。
そのうえで、チームとしてビュフォードにどうプレーしてほしいか、目指すべき姿が明確になってきたようだ。指揮官は続ける。
「それ(チームバスケットができなかったこと)は彼がセルフィッシュということではなくて、見ての通り仲間を生かしたい選手。考えてやっていたことが、あのレッスンがあったからこそ整理できた。あの夜、我々2人で1個1個のクリップを見て会話をしましたし、よりシンプルに明確にどういうときにどっちをやってほしいかという話も2人で続けていますし、チームミーティングでもやっています。元々ある選択肢の中から何を選ぶかが明確になってきたという感じです」
戦術面だけではなく、三ツ井が指摘していた試合までの準備についても「最初から最後まで集中していた。それは表情でも分かる。準備段階からしっかりやろうという気持ちがよりあった。プロセスを大事にできた」とチームの成長に目を細めた。
2季目エリエット・ドンリーも成長「日本人選手も点を取るバスケを」
神戸戦での2連勝にはエリエット・ドンリーの活躍も光った。特に第2戦はビュフォードに次ぐ18得点で、オフェンスでは3ポイントシュートやインサイドへのアタックなど多彩なプレーを披露。ディフェンスでも粘り強い足腰を生かして相手の攻撃を防ぐなど、勝利に大きく貢献した。試合後のヒーローインタビューでは、移籍後初めてファンの前でマイクを握り、笑顔を見せた。
勝久HCの下で2季目となる今シーズンは、試合を経るごとに表情にも言葉にも自信が満ち溢れてきている。「(勝久HCの)システムにも慣れてきて、自分自身の強みを使ってそのシステムの中でどうやってチームの役に立つか」が明確になってきたとドンリーは話す。そのうえで、ペリン・ビュフォードやウェイン・マーシャルといった外国籍選手たちだけに頼らないチームスタイルの確立が重要だと力説する。
「僕だけではないけど、他の日本人選手も点を取れたら外国人選手だけにディフェンスが集中せずに、(相手が)みんなを守らなくちゃいけなくなる。(そういう)バスケをしたいと思っているので、それは単に今、僕自身はうまくいってるところもあるんですけど、それはみんながちゃんと協力してできることだと思う」
この言葉の通り神戸との第2戦では、ベンチ入りした11人全員がプレーし、5人が二桁得点を記録するなど、的を絞らせない攻撃で相手を圧倒。37のフィールドゴールに対して32のアシストを記録し、7選手が3Pを沈めるなどチーム全体でオフェンスが冴えわたった。
久しぶりの同一カード連勝については「ゲームの最初からみんな集中していたし、やっぱり土曜日負けて、日曜日を20点差ぐらい勝つっていうチームになりたくなかった。2試合ともやるべきことを遂行して勝たなくてはダメという気持ちを持って臨んだ」と指摘。今後のことも見据えて「チャンピオンシップで勝てるチームになるためには、そういう集中力が必要。第1戦目のエナジーっていうのも理由としてもあるけど、やっぱりそういうマインドの部分を変えられたと思います」と手ごたえを口にした。
神戸戦の勝利で連勝を3に伸ばした信州ブレイブウォリアーズ。現在13勝6敗だが、激戦区となっている東地区で順位を上げていくためには、勝ち星を積み重ねていくことが非常に重要だ。次節は西地区最下位でここまで1勝18敗と苦戦している愛媛オレンジバイキングスとホームで対戦する。勝ち星が伸ばせていない相手とはいえ、気を抜くことはない。
「油断できない試合だと思います。みんなが集中して作戦もしっかり考えないといけない。その中でもファンのみなさんの応援が大事なのでみんなで戦いましょう」とドンリーも意気込みを見せる。
勝敗はもちろん大切だが、さらに重要なのはやるべきことをしっかりと遂行し、それを習慣づけていくことだ。シーズンが終わる頃にこの1ヶ月の学びが大切だったと振り返られるように、まずは次節のホームゲームで連勝を伸ばしたい。
(芋川 史貴)