Bリーグ西地区の広島ドラゴンフライズは16、17の両日、沖縄アリーナで同地区首位の琉球ゴールデンキングスと第12節を戦い、73ー80、71ー76でいずれも競り負けた。これで4連敗となり、通算成績は10勝11敗。勝率が5割を切り、西地区5位に位置している。
12月に入ってから東地区首位のアルバルク東京、中地区首位の三遠ネオフェニックス、西地区首位の琉球という、現状の”トップ3”とそれぞれ連戦を戦う厳しい日程をこなし、12月の成績は2勝5敗。10日の三遠戦では、開幕から19試合続けて先発出場していたシューターの山崎稜が左第2中手骨基部裂離骨折の怪我を負い、全治6週間と診断された。
20日には同じ西地区で勝敗数で並ぶ大阪エヴェッサと対戦し、その後も中地区3位のシーホース三河、西地区4位の長崎ヴェルカという強豪との対戦が続くため、正念場を迎えている。
ペイントエリア内の得点と3P成功率で劣勢に
琉球との第1戦は相手のビッグマンの一人であるアレン・ダーラムが不在だったにも関わらず、インサイドで劣勢に立った。8点ビハインドで迎えた第4Qはケリー・ブラックシアー・ジュニアの活躍で一時は同点に追い付いたが、最終盤も琉球のジャック・クーリーにゴール下を支配されて敗れた。
多くのスタッツでほぼ互角だったが、リバウンド数は30本対38本、ペイントエリア内での得点では26対44と大きく水を開けられた。
試合後、カイル・ミリングHCは「昨シーズンのチャンピオンである琉球を相手に非常にタフな試合になると思っていた。チームで最後まで戦ったが、力が及ばなかった。特に出だしのディフェンスを課題として、明日に向けて対策をしていきたい」と次戦を見据えた。
その言葉通り、第2戦は序盤からオールコートプレスやハーフコートでのゾーンなど様々な形を使いながら、強度の高いディフェンスを仕掛ける。第2Qは琉球をわずか8得点に抑えた。その間、古巣との対戦となったドウェイン・エバンスを中心に内外から攻め、寺嶋良や船生誠也も3Pを決めるなどして11点リードで折り返した。
しかし、後半に入ると琉球に高確率で3Pを射抜かれ、ゾーンディフェンスを攻略されて第3Qは同点で終えた。第4Qは寺嶋やブラックシアー、エバンスらが得点を重ねて粘るが、琉球の勢いを止め切れずに最終盤で引き離された。
第1戦とは異なり、ペイントエリア内の得点では逆に34対22と相手を上回ったものの、3P成功率は琉球が44.8%(13/29)に上ったのに対し、広島は19.2%(5/26)に低迷したことが敗因の一つとなった。
戦い方の幅の広さの差が結果となって表れ、ミリングHCは「ハーフタイムに『琉球はこのままでは終わらない』と言って選手をコートに送り出したのですが、チャンピオンチームのプライドを見せ付けられました。2試合ともかなりタフなゲームでした」と振り返った。
山崎不在の“穴” フロアバランスが鍵に
厳しい対戦カードが続いている関係上、負けが混んでいることは致し方ない側面もあるが、2戦目の後、ミリングHCは現状の課題感をこう語った。
「やっぱり山崎がいないので、1人1人が個々の技術やレベルを上げないといけないと思っています。彼の穴は大きい。チームは若い選手が多いですけど、成長しないと(山崎の)穴は埋められない。シーズンを通してですけど、1人1人がレベルアップしていければと思います」
オフに群馬クレインサンダーズに移籍した辻直人と入れ替わる形で広島に入団した山崎。先述の通り、今シーズンは先発出場のシューターとして定着し、2連敗を喫した開幕カードのファイティングイーグルス名古屋戦を除き、出場した試合全てで3Pを沈めてきた。自身のBリーグキャリアの中で最も多い1試合平均5.5本の3Pを放ちながら、成功率35.2%という高い数字を残していただけに、離脱はチームにとって大きな痛手だ。
同じく山崎の不在について「彼がいない影響はもちろんある」と語るエバンスも、チームのオフェンスについて「いいリズムをつくれていないという印象があります」と課題を口にする。
帰化選手の河田チリジを擁する広島はビッグマン3人を同時に起用する戦術が武器の一つであるほか、エースのエバンスもドライブを得意とする選手なだけに、オフェンスにおいてはいかにフロアバランスを整えるかが重要になる。山崎のような高確率で3Pを射抜くことができるシューターがいれば相手ディフェンスが広がってインサイドも攻めやすくなるが、山崎不在の現状においては、各選手がスペーシングを意識しながら連係の質を高めることが求められるだろう。
若手の多さが大きな”伸びしろ”に
これで連敗は「4」となったが、ミリングHCは穏やかな表情でこうも語った。
「(これから大事なことは)しっかりとポジティブでいることだと思います。うちのチームはリーグの中でも年齢層が若いので、成長するにはちょっと時間がかかる。毎日練習して、ポジティブに練習に励んでいければいい。ブレイク後はかなりタフなスケジュールでしたが、常にポジティブでハードワークしていったので、このままどんどん成長していければと思います」
確かに、主にベンチ出場ながらもしっかりとプレータイムを得ている中村拓人や上澤俊喜らは20代前半から半ばで、エースガードの寺嶋もまだ26歳。19日には、今月の全日本大学選手権大会で3位に入った筑波大学の4年生である広島出身の三谷桂司朗との契約合意も発表された。
若手選手たちがチーム内で競争しながら切磋琢磨し、それぞれが成長していけば、チームにとってはそれが大きな伸びしろとなる。そして山崎が復帰した時により高いレベルで融合できれば、勝率と順位は自然と上がっていくはずだ。
(長嶺 真輝)