信州ブレイブウォリアーズが年内最後のホーム戦を勝利 厳しい連戦の中で再確認したチームのアイデンティティ
信州ブレイブウォリアーズの三ツ井利也(右)©Basketball News 2for1
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 Bリーグ2部(B2)は21日と22日の両日、各地でレギュラーシーズンの第14節が行われ、東地区・信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリングで同地区の富山グラウジーズと対戦。第1戦を92-96で落としたが、第2戦を延長戦の末、96-89で勝利。2024年のホーム最終戦にかけつけた4,700人余りのブースターが歓喜に沸いた。

 東地区首位のアルティ―リ千葉、西地区首位のライジングゼファー福岡戦を経て、東地区2位の富山をホームに迎えた信州。第2戦の勝利で今季の成績を16勝10敗とし、2位富山(18勝8敗)とのゲーム差を2にとどめた。東地区3位には福井ブローウィンズ(17勝9敗)がおり、上位陣に食らいつくためにも落とせない試合だった中で、勝利をつかんだことによって見えてきたものとは。

チーム救った連続3P 石川海斗「キャプテンとしてなんとか勝たせたかった」

 両日とも手に汗握るシーソーゲームとなった。信州はペリン・ビュフォード、栗原ルイス、生原秀将が負傷により欠場。得点力のある選手やボールハンドラーが少ない状況で、富山の激しいディフェンスをどう攻略していくのか。司令塔である石川海斗の活躍が鍵となる2連戦だった。

 第1戦ではその石川とウェイン・マーシャルのホットラインを中心に得点を重ねてリードを保つも、第4クォーター(Q)に入ると失速。石川はこの試合で23得点を記録したが、そのうち第4Qに決めたのはわずか1得点のみ。チーム最長となる35分間のプレーによる疲労も垣間見え、終盤には大事な局面でターンオーバーを犯す痛恨のミスもあった。

 石川は翌第2戦でも富山の藤永佳昭による激しいプレッシャーなどで前半はわずか2得点、3Pシュートも0/3本と封じられ、チームも11点ビハインドで折り返す。後半に入っても富山の石川へのプレッシャーは変わらずだったが、石川は前半とは打って変わって効率良く得点を重ね始める。石川の調子が上がると同時に信州も富山との差を詰め始め、第4Qの残り27秒には石川の3Pシュートで1点差に迫る。その後、富山のアーロン・ホワイトにフリースローを2本沈められ、82-85で迎えた残り22秒。マーシャルのスクリーンで藤永のディフェンスをかわした石川が、トップの位置から3Pシュートを成功。値千金のショットで延長戦に持ち込むと、延長戦でも冷静にファールを誘ったり、渡邉飛勇のアリウープを演出するなど、ベテランらしいプレーを披露。最後までチームをけん引し、勝利へと導いた。

 試合後のセレモニーで石川は「タフな5連戦で4連敗していたので、どうしても勝ちたいという思いと、アクシデントがある中で、みんながステップアップしようとしていたので、キャプテンとしてなんとか勝たせたいという思いもあったので(シュートが)入って良かった」と笑顔で振り返る。

 連敗を止める立役者となった石川の活躍には、勝久マイケルヘッドコーチ(HC)も「7年前から言っているのは、彼はハートがすごく強くて、自信満々なプレーが素晴らしくて、大事なときにああやって決める。そしてチームを勝たせるっていうのは本当に頼もしいし、かっこいいし、感動しましたし、正直、彼のプレーには泣くかと思いました」と目を細めた。

第2戦では重要な場面で得点を決め続けた石川海斗(左)©Basketball News 2for1

ピンチ救った三ツ井利也 勝久HC「彼のハートにも感動した」

 ビュフォードの欠場により出番が増加した三ツ井利也の攻守にわたるファイトも見逃せない。富山との2試合は先発としてプレーした三ツ井は、第1戦では28分39秒間の出場で11得点4リバウンド、第2戦では今季最長となる32分8秒間の出場で10得点7リバウンドを記録した。

 持ち前の守備では、富山の得点源であるトーマス・ケネディへ徹底マーク。ケネディは第1戦では18得点、第2戦では28得点を記録した。結果だけを見れば三ツ井が守りきれなかったようにもみえるが、特に第2戦は、相手のスクリーンにかからないように執拗にケネディを追いかけたり、フロアに何度も倒れながらも相手と身体をぶつけあうなど、ビッグマンを相手に身体を張って守り続けた。

 また攻撃面では、第1Qに1-6と重い立ち上がりとなった場面で3Pシュートを沈めたり、第4Qの残り4分53秒に一時逆転となる3Pシュートを沈めたりと勝利に大きく貢献。放ったフィールドゴール2本ともを成功させる無駄のないオフェンスでチームを救った。さらに、ドライブから味方へのアシストを演出したり、ファールを誘ってフリースローを獲得したりと、普段以上にプレーの幅を見せつけた印象だ。

 自身のプレーについては「転がっているボールに飛びつくのは当たり前だと思っています。ドライブに関しては、ボールハンドラーがなかなかいない中で、味方にクリエイトするとか、フリースローをもらうのが今のチームに必要だと思っていました」と語った三ツ井。チーム在籍年数最長となるベテランだからこそ、どんなプレーをすれば勝利を引き寄せられるかがよくわかっていたのだろう。

 それでも、マッチアップしたケネディに28得点を許したディフェンス面については自身を厳しく評価する。

 「やられてしまったのは(チームディフェンスの問題というよりも)自分の問題だと思っている。今後もそういうキープレーヤーにつくことが多いと思うので、そこのクオリティを上げるっていうのも大事だと思う」

 1試合での活躍に一喜一憂せず、日々成長を目指していく。チームのアイデンティティを体現する三ツ井らしいコメントだった。

 チームを救ったベテランの活躍には指揮官も「何回も床に倒れても、立ち上がって。(アクシデントで)1回ベンチに下がった後も、『行けます』ってすぐに声をかけてきてくれた。本当にタフで彼のハートにも感動しました」と賛辞を惜しまなかった。

記者の質問に答える勝久マイケルHC©Basketball News 2for1

欠場者の穴埋めるステップアップ「このメンタリティを忘れないように」

 前々節のアルティーリ千葉(東地区1位)、ライジングゼファー福岡(西地区1位)、富山と上位チームとの連戦が続いた信州だったが、結果は1勝4敗。主力選手を多く欠くなどアクシデントもあったが、年内最後のホーム戦を勝利で終えられたことは大きい。

 厳しい5連戦ではあったが、勝久HCはこの期間をチャンスとしてとらえていたという。

 「チームが成長できていた中で、突然いろいろな状況が重なってタフな1週間だった。その中でも怪我人が戻ってきたあとのワクワクや希望がたくさんあったので、選手たちには下を向いてほしくなかった。こういう状況もいろんな選手のチャンスであるし、我々を強くするものだとも信じていました」

 富山との第2戦では、ロスター入りした10人のみで戦い抜いた信州。たとえメンバーがそろわなくても、言い訳をせずにやるべきことを遂行しようとする姿勢は、まさにこれまで信州ブレイブウォリアーズが築き上げてきたカルチャーだ。その状況の中でつかんだ第2戦の勝利は、チームの成長を促すものだったに違いない。

 三ツ井もこの連戦を振り返り、チームの成長を実感しているという。

 「最後の最後まで集中を切らさずにリバウンドもビッグマンだけではなくて、ガード陣も本当にファイトして、本当にみんながステップアップした結果が、こういう結果に繋がったと思う。これで選手が戻ってきても、これが続けられるようになってくれば、どんどんチームの底上げになると思うので、絶対このメンタリティを忘れずにやっていけば、アルティーリ千葉さんにも、富山さんともしっかりと戦えると思います」

 アクシデントがありながらも、大勢のブースターに背中を押されて、ホームで勝利を手にした信州ブレイブウォリアーズ。28日と29日にはアウェイでバンビシャス奈良と対戦する。誰かがいなくても、誰かがステップアップしてチームのアイデンティティを体現する。そういったカルチャーがあったからこそ、B1昇格やBプレミア参入を成し遂げられた。今季もう一度B1昇格を目指す信州にとって、その基盤となる部分を再確認できたのがこの12月だったのではないだろうか。厳しい連戦を経て、チームがどのような変化、成長を遂げるのか。年内最後の試合にも注目だ。

(芋川 史貴)

攻守でチームを支えた三ツ井©Basketball News 2for1

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