Bリーグ2部(B2)は1日から3日にかけて、各地でレギュラーシーズンの第6節が行われ、東地区・信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリングで同地区の山形ワイヴァンズと対戦。第1戦を64-74で落としたが、第2戦では102-76と圧倒し、1勝1敗で同節を終えた。
第1戦は序盤から遂行力の低さが目立ち、ルーズボールへの反応やディフェンスのローテーションなどが噛み合わず。山形はルーズベルト・アダムスやレオナルド・デメトリオら主力選手の欠場を受け、5人全員が3Pラインの外側でプレーする「5アウト」のスタイルを採用。信州にとっては今季初めて対峙するスタイルだったこともあり、苦戦を強いられた。
第1戦ではディフェンスからリズムを崩され、オフェンスでも流れをつかむことができなかった信州だったが、第2戦ではそのうっぷんを晴らすかのように26点差で快勝。第1戦からの修正を経て、第2戦を大差で勝ち切ることができた要因とは――。
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先発入れ替え原点回帰 勝久マイケルHC「利也のエナジーが欲しかった」
第2戦、信州はスターティングラインナップを大幅に入れ替えた。第1戦の先発はペリン・ビュフォード、石川海斗、栗原ルイス、テレンス・ウッドベリー、渡邉飛勇の5人だったが、第2戦ではビュフォードと渡邉に代えて、三ツ井利也とウェイン・マーシャルを先発に起用。三ツ井とマーシャルはともに今季初のスタメン起用であり、勝久マイケルヘッドコーチ(HC)のシステムを熟知するメンバーをそろえる形となった。
この起用がはまり、信州は試合開始から主導権を握る。オフェンスではピック&ロールからボールがよく動き、三ツ井が3ポイントシュートを沈めたり、マーシャルがインサイドで得点するなど、10-0のランに成功。ディフェンスでも山形を約3分間を無得点に抑え、試合の流れを作った。
試合のモメンタムを作った先発メンバーの変更について勝久HCはこう話す。
「理由はいろいろあって、今季の我々はいろんなミスマッチを作れる。そこでアドバンテージは取れるんですけど、昨日(第1戦)ではそれが結構多くなっていて、どうしてもミスマッチがあると周りを見て、ポストを見てしまい、みんなの積極性がなくなってしまっていた。オープンなシュートはそのアドバンテージを理由にたくさん生まれるんですけど、良いリズムじゃない部分があった。それは悪いことではないんですけど、それよりは海斗だったらやっぱり彼の一番のベストなポイントはピック&ロールゲームで、それを昨日(第1戦)はウェインと3本ぐらいしかできていなかった。他の部分でアドバンテージを取れているにしろ、自分のベストなバスケができていない、すなわち我々のバスケができていない。他にも、やっぱりエナジーを持って始めていないっていうことがあったので、和也のエナジーも欲しかった。これだけではないんですけど、いろんな理由がありました」
自分たちの武器を見つめ直し、原点に立ち返ったからこそ試合開始からいいリズムでプレーができたのだろう。開幕前に負傷し、現在もプレータイムが制限されているマーシャルも今季初のスタメン起用について「昨日(第1戦)はエナジーのところが良くなかったので、今日(第2戦)は昨日よりも良いエナジーを持ってプレーすることを意識しました。怪我の具合も日々良くなっています」と笑顔を見せた。
在籍2年目のエリエット・ドンリーが躍動「コートに立ったら100%出し切る」
1勝1敗で終わった今節だったが、目を引いたのはエリエット・ドンリーの活躍だ。信州で2季目となるドンリーはシーズン序盤こそプレータイムが安定していなかったが、この2日間は両試合で20分以上のプレータイムを獲得。特に第1戦ではチームで2番となる27分13秒間プレーし、7得点6リバウンドを記録していた。
信州のシステムはチーム内の細かい決まりごとが多く、ドンリーは加入1年目の昨季はスムーズに動けない場面も見られた。一方、今季はベンチスタートが続いているものの、しっかりとチームのシステムを理解し、試合に出れば持ち前のオールラウンドなプレーや走力を生かしたダンク、粘り強いディフェンスなど幅広い活躍を見せている。
ドンリーの成長には指揮官も目を細める。
「エリエット(ドンリー)は本当に素晴らしい人で素晴らしいチームメイトです。そしてやっぱり彼がもっともっと生きるようなスペーシングの中でプレーさせてあげたり、ラインナップでプレーさせてあげたいっていう思いは常にあります。まだ彼のベストを引き出せていない中で、コートに立つ方法はディフェンスなんですけど、彼自身はディフェンスをもっともっと成長させながら、自分としてはもっともっと彼のベストを引き出すラインナップと一緒に出すことだったり、シチュエーションに置いてあげることだったりをやってあげたいです。リバウンドも頑張り続けていますし、3ポイントシュートもパーセンテージ関係なく自信を持っています。(自分が)信頼してるのは分かっていると思うので彼は。コーチの信頼、チームメイトの信頼はあるっていうのは分かっていると思うので打ち続けていますし、昨日(第1戦)は勝ちには繋がらなかったかもしれないですけど、ビッグスリーがありましたし、良かったと思います」
ドンリー自身も、昨季からの成長を感じているようだ。今季の試合への向き合い方についてこう話す。
「マインドセットは、コートに立ったら100パーセントを出し切ってディフェンスをしたり、オフェンスでもシュートが入らなくても、リバウンドとかいろんなことできるのでそれを頑張っていると思います。昨年よりはもう考えないでバスケができると思っているので、システムを1年ぐらい学んで、今もまだ学ぶことがあるんですけど、その中からいろんなプレーが勝手にいろいろできると思っています。そういうことは考えすぎないで、バスケはもう何年もやっているので、コーチの言う『プレイ・バスケット』に集中しています」
ベンチからの起用についても、「もうそれは(勝久)マイケル(ヘッドコーチ)さんを信用しているので、そういうマイケルさんがどう思うのかによってそういうプレーをしたいと思っています」と前向きだ。「今年のバスケは昨季よりもペースが上がっているので、身長も生かしながら早い段階でフロアをダッシュして、トランジションでもっとチームとしても、僕個人としてもそういう場面で点を取りたいと思っています」と自身の役割をしっかりと受け入れつつ、さらなる成長への意欲を見せている。
修正力を見せるも油断はなし「成功を続けないといけない」
第1戦の課題を修正し、出だしから山形を圧倒して勝利を納めた第2戦。マーシャルは「負けた後の試合はすごく修正をするところであったり、自分たちがもっと良くならないといけないところが出てくる。このリーグはバック・トゥ・バック(連戦)の試合で、次の日にすぐに修正をしなければならない。チームとして今日はそれができたと思います」とバウンスバックできたチームの成長に頷く。
一方、指揮官はチームの成長を感じつつも「でも今日は今日。成功は続けないと意味がないので、今日は終わり。例えば先週にそういう(エナジーや遂行力の)話をして、今週臨んだはずが、昨日はそういうスタートができなかった。来週は来週でまたスタートがどうなるか分からないですけど、また違うマッチアップ、違うゲーム内容になると思うので。でも、どういうふうにやっていこうとチームで40分っていうことを続けないといけないです」と慢心は一切ない。
7連勝で迎えたホームでの第1戦では、チームにどこか油断があるようにも見えた。指揮官も第1戦の後に「我々はタレントのあるチームで、『どこかでスイッチを入れれば勝てるだろう』という気持ちがあるように見える。だから続けてこういうスロースタートがあるのだと思う。そういった勘違いはあるのかもしれない」と苦言を呈していたことからも、集中しきれていない部分があったことは間違いない。
山形戦で連勝が途絶えた信州は、もう一度新たな気持ちでレギュラーシーズンを戦っていくことになる。次節は富山グラウジーズとの北信越ダービーを控える。指揮官が語るように、成功は続けないと意味はない。「勝って兜の緒を締めよ」。古くから伝わるこの教訓を、信州の戦士たちは身をもって学ぶ機会になったのではないか。目標の優勝、B1昇格に向けて、ここからどのような成長を積み重ねていくのか。敗戦を糧にさらなる高みを目指したい。
(芋川 史貴)