昨シーズンからBリーグと天皇杯のファイナルで3回連続で顔を合わせているライバル対決が、白熱している。
Bリーグ西地区2位の琉球ゴールデンキングスと東地区3位の千葉ジェッツによるチャンピオンシップ(CS)セミファイナルは18、19の両日、沖縄アリーナで第2戦までを消化。第1戦は95ー62で千葉Jが先勝、第2戦は81ー63で琉球がバウンスバックを果たし、対戦成績は1勝1敗のタイとなった。最終第3戦は21日午後7時5分から同アリーナで行われる。
ファイナル進出を懸けた運命の第3戦、勝負のポイントは何か。これまでのシリーズの内容から見えてきたのは、いかに先手を取り、自分たちの“土俵”で戦う時間を増やせるかということである。
目次
千葉Jが天皇杯の“再現”で先勝 スピードのミスマッチ攻める
まずはこれまでのシリーズを振り返る。
第1戦は、出だしからこの試合を象徴する場面が訪れる。千葉Jが5アウトでインサイドにスペースをつくった上で、ゼイビア・クックスがアレックス・カークとの1対1を仕掛けてレイアップを沈めた。その後もカークやジャック・クーリーなどフットワークの鈍いビッグマンを狙い、各選手がファストブレイクも含めてスピードのミスマッチを徹底して攻め続けた。
さらに千葉Jは得点源である富樫勇樹やクリストファー・スミスがプルアップで3Pを決めたり、レギュラーシーズン終盤からシュートタッチの悪かったアイラ・ブラウンがキックアウトからフリーのコーナー3Pを沈めるなど、リズムの良いオフェンスを展開。ディフェンスでは琉球のハンドラーにブリッツを仕掛けてタフショットを誘い、試合を優位に進めた。
前半終了時点で59ー38と大差をつけ、後半もさらにリードを拡大。重量級のインサイド陣やポイントガードの少なさといった琉球の弱点を見事に突き、117ー69で大勝した3月の天皇杯決勝と同様にブローアウトで勝負を決めた。
大事な第1戦を制し、12得点、7アシストの活躍を見せた富樫はこう振り返った。
「初戦を取ることはすごく大事という認識で、チームとして今日の試合に臨みました。試合内容を通して、準備してきたことができたと思います。ただ2勝しないと次に上がれないので、しっかり切り替えて、次戦に向けて準備していきたいと思います」
天皇杯決勝に続き、お互いに主要メンバーが揃った状態で対戦した2試合をいずれも大勝し、琉球戦に対する手応えも語った。
「マッチアップしやすい相手だとは思います。琉球はサイズ的にかなり大きいですが、原選手や金近選手、スミス選手がスイッチしながら、うまくディフェンスをできています。実際に今日は天皇杯のイメージもありました。この2試合はいい結果が出ているので、いいイメージを持ちながら戦いたいです」
ディフェンス強度を上げた琉球 「アタックNo.2」も奏功
第2戦は一転し、琉球優位の展開に。千葉Jのハンドラーに対するディフェンス強度を高め、さらにスピードのミスマッチを突かれていたビッグマンが下がり気味で守ったり、ゾーンディフェンスを織り交ぜたりして中を固め、相手のリズムを崩して流れを引き込んだ。足を負傷している今村佳太が第1Qで意地の2本連続3P、第2Qには小野寺祥太が3本連続で3Pをヒットさせるなど、琉球が43ー33とリードして折り返した。
後半も流れはほぼ変わらず。クーリーとカークのダブルセンターが一緒にコートに立ち、ハイローを使ってインサイドを徹底的に攻めるなど、第1戦ではあまり見られなかったオフェンスも展開し、さらにリードを広げた。第1戦は大差が開いた中でもリバウンド数がほぼ同じだったが、第2戦は49本対37本で琉球が大きく上回った。
3P4本を決めて12得点の活躍に加え、富樫に対して激しいプレッシャーをかけ続けた小野寺は、試合をこう総括した。
「昨日課題として言っていた出だしの部分で、ディフェンスの土台を作れたのかなと思います。ターンオーバーの数も10個以上減っているので、その部分も修正ができました」
桶谷大HCが、この日の戦術の一つに、オフェンスでサイズの小さい富樫のところを攻める「アタックNo.2」があったことを明かし、その役を背負ったのも小野寺だった。
ドライブして富樫からファウルを誘う場面もあり、「富樫選手をファウルトラブルに追い込むのは大事で、自分自身もアグレッシブにやるのが大切だと思っていました。やるしかないという気持ちだったので、悔いがないようにプレーしました」と手応えを語った。
「速さ対重さ」強みの異なる両チーム 第3戦で“先手”を取るのは…
第1戦は千葉Jが速さや3Pというチームの武器を最大限に生かし、第2戦では琉球が重さと幅のあるインサイド陣の強みを強調した。このシリーズの内容から分かるように、持ち味が全く異なる両チームにとって、自分たちの“土俵”で戦うことは勝利を引き寄せる上で最も大事な要素となることは間違いない。
だからこそ、より大事になるのは試合の出だしでどちらが先手を取るかである。以下は第2戦に勝った後、第3戦に向けた意気込みを問われた際の小野寺のコメントだ。
「今日みたいなバスケットをすれば、いい結果につながってくると思います。やっぱり僕らはディフェンスのチームなので、最初の5分を大切にしていきたいです。リバウンドもクーリー選手だけに頼らず、ルーズボールも大事にして戦っていきたいなと思います」
千葉Jは逆王手を掛けられたが、今シーズン既に東アジアスーパーリーグ(EASL)と天皇杯の2冠を獲得している百戦錬磨のチームに気負いはない。第3戦に向け、原修太はこう語った。
「劇的に変えることとかはなくて、ちゃんとやるべき仕事を一人一人が確認していければいいかなと思います。反省しなきゃいけないところはたくさんありますが、焦ったことはこれまで一度もありません。もちろん琉球が強いのは分かっていますけど、自分たちが勝てる自信はあります」
運命の第3戦。千葉Jが3冠獲得という偉業に向けて一歩前進するのか、それとも琉球が2連覇という高みに向けて一つ階段を上るのか。リーグをけん引するトップクラブ同士の最後のバトルが、もうすぐ幕を開ける。
(長嶺 真輝)