Bリーグ1部(B1)は12月20日に各地でレギュラーシーズンの第13節が行われ、サンロッカーズ渋谷はアウェイのホワイトリング(長野市)で信州ブレイブウォリアーズと同地区対決に挑んだ。
試合は第1クォーター(Q)、信州に連続得点を許しスタートするも、ジェフ・ギブスがインサイトで得点を重ねる。その後、SR渋谷は1Qで10本のフリースローを得るなど内外からバランスよく得点を積み重ね、31-27と上々の滑り出しを見せる。第2Qもお互い譲らない展開が続き、52-50と前半を折り返す。
勝負を分けたのは第3Q。出だしからディフェンスの強度を高めたSR渋谷は、信州から立て続けにターンオーバーを誘発。堅守で信州を12得点に抑えると同時に、得点をテンポよく積み重ね、リードを18点にまで広げることに成功。その後試合は終始SR渋谷ペースで進み、97-81と今季最多得点で勝利を収めた。
SR渋谷はギブスが24得点5リバウンド4アシスト、アンソニー・クレモンズも24得点5リバウンドと大活躍。田中大貴、ライアン・ケリーもそれぞれ12得点をマークするなど、チーム全体でバランスよく得点を積み重ねた。
なお、昨シーズンまで信州に所属していたジョシュ・ホーキンソンの初めての凱旋も期待されていたが、ホーキンソンのコンディション不良により実現しなかった。ホーキンソン不在の中でもチームでつかみ取った大きな勝利。バイウィーク明けは6勝2敗と軌道に乗り始めているSR渋谷の好調の要因とは。
ビッグマン揃わず4勝10敗発進 守備改善で復調へ
今季からルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ(HC)体制となったSR渋谷。名将が指揮を執ることに加え、ホーキンソンや田中らが新たに加入するなど、開幕前から前評判が高かったチームの1つだった。
しかし、チームは開幕から4連敗と決して順風満帆なスタートではなかった。今夏のワールドカップで日本代表の主力としてプレーしていたホーキンソンのチーム合流が遅れたことに加え、得点源のジェームズ・マイケル・マカドゥが開幕直前に離脱。ルカ体制のアイデンティティでもあるディフェンスでもミスが目立ち、11月のバイウィークに入るまでの成績は4勝10敗(中地区6位)と遅れをとっていた。
「まずはシーズン開幕をとても大きな問題を抱えながら迎えた。そして開幕からの問題が止まずに、ずっと回り回ってここまで来てしまった」とパヴィチェヴィッチHCは振り返る。また、「このBリーグはとても激しいリーグ。やはりビッグマンがコンディションを整えて試合に出ることさえできれば、私たちにテンポをもたらしてくれるし、ディフェンスもオフェンスもアグレッシブにやってくれる。リバウンドも得点もビッグマンが核になっているためビッグマンの重要性はとても大きいと感じている」と言うように、第12節の千葉ジェッツ戦のようにマカドゥだけでなく、ケリーやホーキンソンらビッグマンもなかなか揃わない状況だった。
そんな中でも、12月は6勝2敗と勝利を積み重ねているSR渋谷。バイウィーク前の14試合では平均80.2失点を許していたが、12月3日の仙台89ERS戦から10日の大阪エヴェッサ戦まで4試合連続で相手を67得点以下に抑えるなど、徐々にディフェンスも機能し始めている。
指揮官は「特に日本人のガードの選手たちがとても集中して2週間の練習に取り組んでくれた。『問題を抱えている』と言ったが、それに打ち勝つべく、選手たちはハードに、もっとよい状態になりたいと思いながらこの2週間練習してきた」と好調の要因を口にする。
日本人ガードといえば、ベンドラメ礼生と小島元基の2人だ。
ベンドラメは平均出場時間を昨季の25分07秒から今季は30分06秒まで伸ばし、持ち味の3ポイントシュートも100本中37本(37.0%)と、昨季の31.5%(203本中64本)から大きく改善している。
小島はバイウィーク前こそ出場した12試合中7試合で出場時間が5分未満に終わるなど出番が少なかったが、12月は8試合中7試合で10分を超えるプレータイムを獲得。目立つスタッツこそないものの、ハードなディフェンスと堅実なプレーメイクでチームを支えている。さらにアルバルク時代では指揮官と2度の優勝も経験しているため、信頼は厚い。
ガード陣の活躍もあり上昇気流に乗ったかに見えるSR渋谷だが、それでも指揮官が目指す理想とはまだまだギャップがあるという。
「バイウィーク明けからすごく成長しているが、まだまだ困難に打ち勝っていかなければならないし、問題も消化し切れていない。(チームの完成度は)60〜70%ぐらい。あるいは80%の時もあるが、60%まで落ちてしまうときもある。まだまだシーズンが続くので、ここから自分たちの目指すところまでいけるか見ていきたい」
優勝経験持つ田中大貴は「大きな存在」
小島同様、田中大貴もまたパヴィチェヴィッチHCと優勝を経験している。そんな田中は昨季、腰椎椎間板ヘルニアの治療によりシーズン途中で離脱。再起を目指すシーズンに渋谷へと移籍し、恩師とともに新たな優勝トロフィー獲得を目指している。
優勝経験や日本代表経験を持ち、リーグ屈指のオールラウンダーである田中は、チームにとっても大きな存在となっている。指揮官は語る。
「怪我からの復帰となる今シーズンは(田中にとって)すごく難しいシーズンだと認識している。彼のコンディションに関しては70%に達しているかどうかというところ。やはり彼の存在は日本、アジア、国際的にも大きいと思っている。いつでもトップにいられるかと言ったら、コンディションの影響もあってそうならないかもしれない。だが彼はとてもよいメンタルの持ち主であるし、バスケットに精通していて頭もよい。そんな部分で存在を発揮してチームに大きなものをもたらしてくれている。彼の存在はチームにとどまらず、バスケ界にとって大きな存在だと認識している」
指揮官の目指すバスケットも徐々に浸透してきているサンロッカーズ渋谷。ケガ人に苦しみながらも勝利を重ね、チームにエナジーを与えるガード陣や経験豊富なベテランの活躍も光る。現在10勝12敗と負け越しながらも、チャンピオンシップ出場が約束されている地区2位まではわずか4ゲーム差と射程圏内にとらえている。さらに勝ち星を伸ばし、中地区の上位に食い込むことはできるか。今後も注目のチームの1つであることは間違いない。
(芋川 史貴)
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