男子日本代表が48年ぶりに自力でオリンピックの出場権を獲得し、日本のバスケットボール史において意義深い年となった2023年。その歴史的な舞台となった”聖地”沖縄アリーナは、大晦日まで圧倒的なバスケ熱で充満した。
Bリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスは12月31日、東地区5位の仙台89ERSを沖縄アリーナに迎え、84ー69で勝利した。大黒柱のジャック・クーリーはチームトップの25得点に加え、B1の1試合リバウンド数の新記録となる27リバウンドを獲得。最終盤には特別指定選手として12月に加入したばかりの脇真大が初めて琉球のユニフォームを着てコートに立った。
さらにこの一戦には琉球のレギュラーシーズン最多来場者記録となる8,412人の観客がアリーナを訪れ、Bリーグ初優勝を成し遂げた2023年を最高の形で締めくくった。
仙台の3P成功率を15.8%に封じる
琉球がスタートから激しいプレッシャーを仕掛け、9対0のランで主導権を握った。仙台の日本人エースである阿部諒を小野寺祥太らが抑え込み、第2Q終了時点で47ー33と前に出た。クーリーはゴール下を制圧し、前半だけで19得点、12リバウンドとダブルダブルに達成した。
後半も阿部やネイサン・ブースら仙台の得点源に対してショーディフェンスやダブルチームを仕掛け、自由にさせない。特に仙台の3P成功率を15.8%(19分の3)にまで抑えた。一方、琉球は岸本隆一や今村佳太が積極的にペイントアタックし、キックアウトでフリーをつくって3P成功率は40.0%(20分の8)に上り、最後まで追い上げを許さなかった。
クーリーが「20-20」のダブルダブルを達成したほか、ヴィック・ローが18得点、今村が8得点、6アシスト、2スティール、岸本が6得点、7アシストを記録。アレン・ダーラム、渡邉飛勇という2人のビッグマンが不在だったが、各選手が持ち味を発揮して快勝した。
サイズの記録抜き「非常に嬉しい」
試合終了時点では、クーリーのリバウンド数は公式スタッツで「26」となっており、2022年3月16日にアルバルク東京のセバスチャン・サイズが達成した数字とタイ記録だったが、記者会見でクーリーに順番がまわってくる直前に「27」に修正された。会見場に姿を現したクーリーは、新記録達成の受け止めを聞かれ、第一声で「very excited! very good!」と笑顔を見せた後、こう続けた。
「まずはチームが勝ったことが嬉しいですし、その中で自分がB1のリバウンド記録をつくれたことも嬉しく思います。リバウンド数は自分の能力だけではなくて、チームメートのヘルプで取れるので、そこにも感謝したいと思ってます」
毎年リバウンド王を争うライバルのサイズが持つ記録を抜いたことについては「琉球に来てから自分は何回かリバウンド王を取っていますが、その中でもサイズは切磋琢磨してきた間柄だと思ってます。彼の記録を抜いたことは非常に嬉しく思ってます」と喜びを語った。
ダーラムの負傷欠場が続く中、この試合も33分57秒と出場時間が長くなっており、疲労度を問われると「少しはある」と答えた。ただ、2年前から体重を落として動きにエナジーが増していると自己分析し、「リバウンドを取ることで他の選手のスコアが伸びることが自分の役目だと思っています。その役割を今後も続けていきたいです」と決意を新たにした。
桶谷大HC「ハードワークしてくれる」
会見では、新記録の達成を後押しした裏話も明かされた。以下は桶谷大HCのコメントである。
「(クーリーを)代えようとした時に今村と岸本から『もう1本リバウンド取ったら新記録になるみたい』と言われて、ジャックをコートに残したんです。彼がいつもリバウンダーとしてハードワークしてくれるから、新記録を達成させてあげていいかなと思いました。最後相手のフリースローが落ちて、ちゃんと取ってくれましたね」
今村と岸本の”進言”について把握していなかったクーリーは、記者から桶谷HCの裏話を聞いて「2人の声は自分の耳には届いてなかったんですが、そういった声をコーチに届けてくれるというのは、非常に良いチームメイトを持ったなと思っています」と感謝を述べた。
2連覇に向けた思いも語った。
「今後もチャンピオンリングをファンに披露できたらいいなと思ってます。非常にいいスタッフが揃っているチームなので、自分も優勝のピースになりたい。優れたコーチ、選手と協力しながら、最終的にチャンピオンシップを狙いたいです」
キングスデビューの脇真大「先輩たちに感謝」
記者会見では、ホームの沖縄アリーナでキングスデビューを飾った脇もマイクの前に座った。出場は最後の1分48秒のみだったが、相手のインサイド選手にプレッシャーを掛けたり、ベースラインをドライブして逆サイドのコーナーの選手にキックアウトしたりと、積極性が随所に見えた。いきなりの出場で8千人超の大観衆に迎えられた感想を聞くと、こう答えた。
「これだけたくさんのお客さんが入った会場で試合をすることは初めてだったので、本当に緊張しましたけど、ワクワクという気持ちでコートに立てればなと思っていました。先輩たちが頑張って点差を開かせてくれて自分が出場することができたので、感謝していました。この最高のアリーナでプレーをできたことはとても嬉しかったです」
スラッシャーとして高い得点能力を持ち、昨年末のインカレで白鴎大学を優勝に導いて大会MVPに輝いた。琉球には自身と同じポジションに今村や小野寺、牧隼利、田代直希など様々なタイプの選手がいる。それを念頭に「どれだけ食らいついていけるかが、これからどうプロキャリアのスタートを切るかに繋がると思うので、徹底してやっていきたいです」と語り、各選手の持ち味を吸収していく考えだ。
桶谷HCも「彼はインカレのMVPで得点王ではあるんですけど、簡単にキングスの試合には出られないと思います」と現状を評価した上で、「まずオフェンス、ディフェンスシステムをしっかり覚えること。それで、コートに出た時にしっかり役割を果たすのが第一。その中で彼はドライブが得意なので、どれだけペイントタッチできるか。今シーズンというよりも、2年、3年かけて育てたい選手だと思ってるので、将来キングスを背負って立つ選手になってほしいです」と期待感を語った。
(長嶺 真輝)