FIBA男子ワールドカップの決勝トーナメントが5日、フィリピン・マニラのモール・オブ・アジア・アリーナで開幕。6日までに準々決勝4試合を終え、セルビア(FIBAランキング6位)、アメリカ (同2位) 、ドイツ(同11位)、カナダ (同15位)の4カ国が準決勝に進出した。カナダの4強入りは初めて。準決勝は8日の午後5時45分(日本時間)からセルビア対カナダ、午後9時40分からアメリカ対ドイツを同アリーナで行う。
準々決勝4カードの結果は以下。
セルビア87ー68リトアニア
アメリカ100ー63イタリア
ドイツ81ー79ラトビア
カナダ100ー89スロベニア
沖縄ラウンドを勝ち上がり、日本のバスケファンにとっても馴染み深い存在となったドイツとスロベニアは明暗が分かれる結果となった。スロベニアにとっては初の準決勝進出を懸けた大一番だったが、絶対的エースであるルカ・ドンチッチが勝負所の第4Q途中で退場に。試合後の会見では、ドンチッチが審判の笛に「不公平だ」と漏らす場面も。何があったのかー。
カナダのアレクサンダーが“ダブルダブル”
ドンチッチに対し、カナダもシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを擁し、昨シーズンのNBAファーストチームの直接対決となった一戦。多くのNBA選手を抱えるカナダがアレクサンダーを中心に高い個人能力で得点を積み上げるのに対し、スロベニアはドンチッチを中心に相手ディフェンスを崩し、前半で3Pを17本中10本沈めて応戦した。両者一歩も譲らず、50ー50で折り返した。
第3Qに入ると、カナダのRJ・バレットがオフェンスをけん引し、素早いトランジションからの速攻などで突き放しにかかった。ディフェンスではディロン・ブルックスを中心に、オールスイッチでドンチッチに激しいプレッシャーを掛け続けた。
スロベニアはドンチッチの個人技でなんとか一桁点差まで詰めてこのクオーターを終えたが、その後はまたもリードを広げられた。さらに15点差とされた第4Q残り6分37秒でドンチッチがこの試合2度目のテクニカルファウルを吹かれ、退場となり万事休す。残りのメンバーが奮起し、残り4分を切って一時は9点差まで詰めたが、最後はカナダに自力の差を見せ付けられた。
カナダはアレクサンダーが31得点、10リバウンド、4アシストのダブルダブル。バレットも24得点、9リバウンドと続いた。ドンチッチは26得点、5アシストだった。
審判が「ファウルを吹かない」と言った?
試合後、ドンチッチは「まずはカナダを祝福したい。彼らには世界最高の選手の一人がいるので、止めるのはとても難しかった。ただ自分たちは100%の力を出し切った。顔を上げていい。このチームを誇りに思う」と語った。一方で、ブルックスらにフィジカルに当たり続けられながら、思う様にファウルがコールされなかったため、審判への不満を隠さなかった。
「代表チームのためにプレーする時は多くの感情があり、自分をコントロールできない時も多い。でも、審判の一人が『彼(ドンチッチ)は私たちの方に向かってくるから、ファウルはコールしない』と言った。それは不公平だ。私が多くの不満を言うことは自覚しているけど、相手とフィジカルにプレーしている中で、それは公平じゃない」
審判の発言の真偽は定かではないが、接触やコミュニケーションにおけるレフリングがNBAとは異なる傾向がある国際大会。ドンチッチにとってはアジャストに苦しんだ側面もあるかもしれない。アレクサンデル・セクリッチHCも「彼は長い時間プレーし、多くの場面でボールを持つ。疲労もある中で、感情をコントロールすることは難しい」と擁護していた。
一方で、ドンチッチはマッチアップしたブルックスを称賛する言葉も発した。試合中、大歓声を浴び続けた自身とは対照的に、NBAのヒール役で知られるブルックスはボールを持つ度に大ブーイングを受け、それを念頭に発した言葉であろう。
「彼はいつものようにとてもフィジカルだった。多くの人は彼を好きではないかもしれないけど、私は彼のことをリスペクトしている。素晴らしいプレーをしている」
「もっと感情をコントロールしないと」
スロベニアは人口約210万人(2020年現在)という小国ながら、2021年の東京五輪では4位という好成績を収めた。今回のW杯は惜しくも準々決勝で敗退したが、この試合では全体で3Pを31本中15本(成功率48.3%)を決めるなどドンチッチを中心に各選手がそれぞれの役割を全うし、自らのスタイルを磨いている。
スロベニアが将来、W杯でメダル獲得を懸けた準決勝以上に進むために必要なことを問われたドンチッチは「正直に言って、自分たちはそこに近かったと思う。私がもっと感情をコントロールしないといけない」と改善を誓った。
まだ24歳という若きエースに引っ張られ、近年急激に存在感を強めているスロベニア。ドンチッチに加え、各選手がステップアップを続けていけば、W杯や五輪でメダルをつかむ日はそう遠くないかもしれない。
(長嶺 真輝)