B1東地区の千葉ジェッツは30日、ホームのららアリーナ東京ベイに西地区の琉球ゴールデンキングスを迎え、77ー65で勝利した。
近年、Bリーグと天皇杯の国内二大タイトルで常に優勝争いに絡んでいるライバル対決なだけに注目度は高く、10,432人もの大観衆がアリーナに集結。10月6日にホームであった開幕2戦目で負傷して以来、欠場が続いていた千葉Jの渡邊雄太も復帰し、会場を盛り上げた。
千葉Jは13勝2敗で東地区首位をキープ。11勝4敗となった琉球も西地区2位のまま、順位は変わっていない。
第3Qで千葉Jがリード拡大 「3Pの精度」で差
試合は第1Qから千葉Jが抜け出す。渡邊が戻ったことでボールプッシュのスピードが一段と増し、富樫勇樹や原修太らが効率良く3Pを射抜いた。一方の琉球は、この日の3Pが8分のゼロで大ブレーキとなった岸本隆一を筆頭にことごとく外のシュートがリングに嫌われた。それでも、ヴィック・ローが欠場した中でアレックス・カークやケヴェ・アルマが得点を繋ぎ、前半は39ー33で千葉Jリードと大差は付かずに折り返した。
試合が大きく動いたのは第3Q。相変わらず3Pの精度が上がらない琉球を横目に、千葉Jがギアを上げる。
富樫はスクリーンを巧みに使いながら、内外からシュートを決め、ディー・ジェイ・ホグもこのクォーターに2本連続で3Pをヒット。荒尾岳がインサイドで体を張るなどしてチームを鼓舞し、リードを最大20点まで広げた。第4Qは若干流れが停滞したものの、そのまま千葉Jが逃げ切った。
2カ月近くぶりにコートに立った渡邊は、2本の強烈なダンクを含めて8得点。さらに7リバウンド、1アシスト、1スティール、1ブロックも記録した。3Pは5分の0で、ターンオーバーも四つあったため、まだ試合勘が完全に戻ってはいないが、復帰戦としては上々の出来と言えるだろう。
試合後の会見では、冒頭で「2カ月ぶりの試合だったので、パフォーマンスは悪かったですけど、足首の痛みもなく、問題なくプレーできました」とコメント。離脱中はチームメイトのプレーを「頼もしいなと思いながら見ていた」と言い、その上で「自分がコートに戻ってきた以上、しっかりチームを勝たせるプレーはしないといけないと思っているので、タフな試合を勝ち切れたのは良かったです」と振り返った。
渡邊、脇に対して「死ぬ気で僕を止める気持ちが見えた」
各地区の上位チーム同士の対戦となったこの試合で、注目のマッチアップがあった。昨シーズンまでNBAでプレーしていた30歳の渡邊と、今シーズンから琉球とプロ契約を結んだ大型ルーキーの22歳、脇真大である。二人とも先発でコートに立ち、初めから顔を突き合わせた。
206cmの渡邊に対し、脇は193cm。身長のミスマッチがある中、脇はオフボールの段階から積極的に体を当て、プレッシャーをかけ続ける。それに対し、渡邊はスクリーンで脇を剥がしならボールをもらい、ドライブや3Pでゴールを狙った。脇も負けじとファストブレイクに走ったり、ドライブで仕掛けたりして、この日は8得点、3リバウンド、3アシストを記録した。
脇のような若手が闘志むき出しで自身に向かってくることについて、渡邊は日本代表で共闘してきた三遠ネオフェニックスの吉井裕鷹を引き合いに出し、柔らかい笑みを浮かべながらこう語った。
「僕は本当に、フィジカルに、恐れずにやってくる選手は大好きです。2、3年前に初めて吉井と一緒に練習をした時に彼をリスペクトしたのも同じ理由でした。日本人は優し過ぎる選手が多かったりする中で、いい意味でクレイジーなメンタリティを持った選手がどんどん出てきて、日本代表に入って世界を経験したりすれば、日本のバスケットは次のレベルに行くことができると思います」
懐の深さが伺えるコメントは続いた。「もちろん僕は僕で、彼らに簡単に負けないようにしたいなと思います。今後は代表でチームメイトになることもあると思うので、彼らの成長を楽しみにしたいなと思っています」
脇個人に対しての印象も語った。以下は「脇選手とはトラッシュトークなどもありましたか?」との質問に対する返答である。
「彼は口でそういうことを発さなくても、フィジカルの部分だったり、フルコートでピックアップしてきたり、死ぬ気で僕を止めるという気持ちが試合を通してすごく見えました。今日は僕のシュート確率は悪かったので、明日はしっかり修正して確率を上げていければなと思っています」
脇、渡邊の存在は「刺激になる」
一方の脇。白鷗大学4年時に全日本大学選手権(インカレ)でチームを優勝に導き、MVPに輝いた実績を持つ。プロ契約初年度となった今季は、これまで全15試合でスタメンを務め、ルーキーらしかならぬ活躍を続けている。
輝かしい経歴を持ち、将来のスター候補の一人である脇にとっても、渡邊は雲の上のような存在だった。「僕もずっと応援していた選手なので、こうやって一緒にコートに立ってプレーできて、夢のような感じでした」と言う。仮にローが出場していたとしても、主にビッグマン2人のラインナップで戦い、自身が渡邊をマークする予定だったと明かし、試合前から「トップの選手とマッチアップできるのは本当に楽しみにしていました」と振り返った。
ただ、マッチアップの自己評価は辛口だった。
「渡邊選手は3Pが武器なので、そこは消すように意識してやっていたんですけど、やっぱり3Pを消せばドライブを選択してくる。そこでもっとフィジカルにやっていれば、2Pのシュートを抑えられたところが何本かありました。そこは明日(第2戦)修正してやっていきたいなと思います」
渡邊は6シーズンに渡ってNBAのチームに所属していたが、Bリーグでは外国籍選手も含め、そこまで長い期間をNBAで過ごしたプレーヤーはまだ少ない。脇は「非常にレベルの高い選手がBリーグに入ってきてくれることは、僕たちにとって刺激になります。それはとても嬉しいことです。もっともっと、そういう選手たちみたいにやっていけたらいいかなと思っています」と話し、渡邊の存在を成長の糧にしている。
この日の試合では、B3の横浜エクセレンスから琉球にレンタル移籍し、自身初となるB1でのキャリアをスタートさせたばかりの平良彰吾が、日本のトップガードの一人である富樫に対して積極的にプレッシャーを仕掛ける場面もあった。
NBAや代表の国際戦で結果を残してきた先駆者たちに対して、若手が積極果敢に立ち向かっていく。そういう姿は、各々のレベル向上にとどまらず、観戦するファンも大いに魅了する。願いも込め、これからも渡邊のような経歴を持った選手が増えていくであろうBリーグ。各世代の選手たちが互いに刺激を受け合い、リーグ全体の活性化につなげていきたい。
(長嶺 真輝)