「意思決定を楽しんでいく」正念場の滋賀レイクス 33歳・保田HC代行の目指すバスケとは
選手に指示を出す滋賀レイクス保田HC©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。元バスケ日本代表の渡邉拓馬選手に似てると言われたことがある。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 わずか1カ月の間に、西地区最下位の滋賀レイクスを襲った出来事を整理する。

・10月16日 平均20.2得点、9.3リバウンドのスタッツを残していた大黒柱のセンター、イヴァン・ブバが左足関節内果骨折の重症を負い、約12週間の離脱。

・10月31日 NBA経験もあるジェイコブ・ワイリーが母国にいる家族の問題で契約解除を発表。

・11月2日 デイビッド・ドブラス、テレンス・キングの両外国籍選手と短期契約の締結を発表。

・11月16日 「チームフィロソフィーを実践する上で解消しえない方向性の違いが生じたため」との理由でスペイン代表ACも務めるルイス・ギルHCと契約解除を発表。保田尭之ACがHC代行 (以下、HC)に就任。

 まだシーズン序盤戦にも関わらず、早くもチームの再構築を迫られた滋賀。バイウィーク明けの11月19、20の両日、アウェーで昨季準優勝の琉球に挑み、51-72、84-89と連敗を喫して通算2 勝9敗、西地区最下位と依然厳しい状況が続く。

 しかしこの連戦を見る限り、チームの今後についてはそこまで悲観的に捉える必要はないかもしれない。保田HCが「勝つチャンスは本当にあった」と振り返る通り、チームが掲げる「堅守」「早い展開の攻撃」を体現した第2戦を中心にリポートする。

第1戦は完敗 リバウンド数で43対56

 第1戦は連係の精度やプレーの激しさで琉球に差を見せ付けられ、序盤から苦しい展開に。特にジャック・クーリーやジョシュ・ダンカンといった強力なインサイド陣にゴール下を支配され、リバウンドの本数で43対56と水を開けられて完敗した。試合後、保田HCはこう振り返った。

 「新体制になりフレッシュに入っていきたい、よりチーム一丸となって戦っていきたいという思いはありました。ただこれはやってほしい、これはやってほしくないということを一つ一つ丁寧に磨き上げていくことが当分は必要だと感じます。新しいシステムを導入しているところで、やっぱり時間も必要だと思っています」

大接戦を演じた第2戦 示した”戦う姿勢”

 指揮官は新戦力も含めてフィットするには時間を要するとの見通しだったが、選手たちはいい意味でそれを裏切り、第2戦で早速修正して見せる。

 今季初先発となった204cmの日本人ビッグマン・川真田紘也、41歳の大ベテランで新戦力のドブラス、現状では最大の得点源であるケルヴィン・マーティンをスターターで起用し、ビッグラインナップでインサイドを固める。もう一人の新戦力であるキングも含めて、前日よりさらに強度を上げた守りで琉球に挑んだ。

 試合は序盤からシーソーゲームとなったが、先に流れを掴んだのは滋賀だった。マーティンが前半だけで放ったスリーを4本全て沈める。ただ琉球もクーリーを中心に追いすがり、40-40の同点で折り返した。

 後半もクロスゲームが続くが、滋賀はオフェンスでキックアウトからのフリーでのコーナースリーや、激しい守りからの速攻など、前日には少なかった、チームとして表現したい形を度々披露。第4Q残り4分を切った時間帯まで地力で勝る琉球を相手にリードを保った。最終盤の勝負所でビッグマン4人が全員ファウルアウトし、インサイドを攻められて敗れたが、それは最後まで” 戦う姿勢”を示した結果であり、沖縄アリーナに詰めかけた6,807人の観客を最後までハラハラさせる見事な戦いぶりだった。

第2戦では琉球を相手に接戦を演じた©Basketball News 2for1

琉球・田代も「本当に強い相手」と警戒

 試合後の保田HCの言葉にも、充実感が垣間見えた。「1戦目はまだシステムが馴染んでいない中で苦しい時間帯を自分達でつくってしまいましたが、今日は40分間、拮抗したゲームをトップクラブの琉球とできたことに関してポジティブに捉えていいと思っています。勝つチャンスはあった。次の連戦はこれを初戦からできるようにならないといけない。自分たちは決して下を向くようなプレーはしていないと思います」。

 球団発表のコメントでは、第2戦で14得点、9リバウンド、6アシストと攻守でチームを支えたドブラスも「アジャストは良くできていると思います。チームメートやコーチ陣が、自分がすぐに溶け込めるように様々な形でヘルプしてくれています。現時点では10点満点で7~8点くらいのアジャスト具合なので、今後よりフィットできると感じています」と好感触を語った。

 この日の試合内容を受け、琉球主将の田代直希も滋賀の印象について「コーチが変わるというのはすごく難しいことなので、1日目はまだ共通理解が持てていないのかなというミスがありましたが、今日は本当に激しいディフェンスから入ってきて、戦術的にも僕らが不利になるところを突 いてきました。正直、今日は負けてもおかしくなかった。滋賀さんはもっと良くなっていくでしょうし、本当に強い相手だと思います」と話し、今後に向けて同地区ライバルへの警戒心を示した。

浮上のキーマンは川真田紘也と杉浦佑成

  外国籍選手の人数が揃い、日本代表ガードで司令塔のテーブス海が健在の中、今後チーム浮上の鍵を握るのは、この連戦で存在感を示した川真田と、今季三遠から移籍した杉浦佑成だろう。

 まだ24歳で、将来性豊かな川真田。バイウィーク前までは出場時間が10分を割る試合も多かったが、この連戦は第1戦で今季最長の18分53秒出場し、同じく今季自身最多の9得点を記録。第2 戦では今季初のスターターを務めて16分42秒コートに立った。いずれの試合もリバウンドは1本ずつだったが、クーリー、ジョシュ・ダンカン、アレン・ダーラムというリーグでもトップ級のフィジカルの強さを誇る琉球のインサイド陣に対して終始体を張り、スタッツには表れない部分でもチームに貢献した。

体を張ったプレーが光った川真田©Basketball News 2for1

 滋賀の前の2020-21シーズンに特別指定選手として所属したB2佐賀の頃から共に戦う保田HC (当時は佐賀AC)も川真田を高く評価しており、「彼に日本代表のユニホームを着させるために、自分もコーチとしてしっかり働きたいと思ってます。ドブラスと一緒に出る時間帯も出てくると思いますが、アウトサイドで見せるプレーももっとあっていい。まだ彼がリーグ戦で見せていない才能を引き出すきっかけもこの期間につくれる可能性はあると思います」と語り、潜在能力に目を向けた。

 一方の杉浦はこれまで世代別の日本代表や東京五輪3人制の代表に選ばれるなど実績は十分だが、直近の3シーズンは移籍を繰り返し、なかなか所属チームで存在感を発揮できていないのが現状だ。今季も8試合で先発を務めてきたが、平均スタッツは4.6得点、2.2リバウンドと低調で、物足りない感は否めない。

 しかし、今回の第2戦では今季最長の26分19秒出場し、後半の勝負所を含めて今季最多となる3 本のスリーをヒット。リバウンドも今季最多の6本と体を張った。スモールフォワードで196cm、95kgという日本人の中でも優れた体格を持ち、アウトサイドもこなせる稀有な選手であり、このパフォーマンスを維持したいところだ。

 保田HCも「彼が本来持っている才能をコートで自信を持って発揮してくれたことはすごく大きな収穫です。あのフィジカルを持っている日本人選手としては、最も器用な選手の一人だと思っています。あとは持って生まれたものと、培ってきたものの両方を発揮する時に自信を持てるか、だけの問題です」と語り、強いメンタルを磨く必要性を説いた。

杉浦にも期待がかかる©Basketball News 2for1

保田HC大役にも気負いなし「チームと一緒に這い上がる」

 最後に、若干33歳でB1チームを率いることになった保田HCについても触れたい。1989年7月 15日生まれの大阪府出身。関西外国語大学卒で、2013年に和歌山トライアンズ(NBL)のACに就任し、コーチ歴をスタートさせた。まだ20代だった2016-17シーズンからBリーグ史上最年少のHCとしてB2熊本を3シーズン率い、18-19シーズンには西地区優勝。19-20シーズンにはB3佐賀のACに就任し、初年度にいきなり優勝を達成してB2昇格を果たした。直近の2シーズンは世界トップクラスのスペイン代表に帯同して指導法や戦術を学ぶなど、将来有望な指導者の一人だ。

 19日の第1戦後に意気込みを聞くと、淡々とした口調ながら、プレッシャーを楽しんでいるようなワクワク感を内包した言葉が返ってきた。

 「昨今のBリーグは、コーチ同士の引き出しの出し合いという部分にすごく面白みを感じています。一つ戦術が当たったとしても、次は守られる。その守られた中で、次は何を出していくか。スタッフ同士のコミュニケーションも必要になるし、選手がどう反応できるかも大事になる。そういう高いレベルになっているのを感じながら、コーチングをしています。プレッシャーを感じ、楽しみながら、チームと一緒に這い上がっていくシーズンにおける自分の役割をしっかり務めていきたいです」

保田尭之HCは新たな挑戦にも気負いはない©Basketball News 2for1

 各カテゴリで結果を残してきた実績と自信に裏打ちされてか、自身初のB1HCにも気負いは無いようだ。自らのコーチングの強みについても「ソリッドなディフェンスから走る、ということがクラブとしてしっかりと掲げている目標です。その上で自分がやっていきたいのは、選手たちが意思決定を楽しんでいくバスケです。それが相手にスカウティングされづらく、かつスピーディーで守りづらいバスケを体現することに繋がると思っています」と明確に語る。

 26、27の両日にある連戦も8勝3敗と好調を維持し、西地区3位につける強豪の名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦する。新体制となってから初のホーム戦になるため、「自分達が目指す方向性はこういうものなんだということを(ファンに)プレーで示し、誇りを持ってもらえるような姿を見せたいです」と力を込めた。

 新進気鋭のコーチの下、新戦力との融合、若手のステップアップを着実に進めていきたい滋賀。長いシーズンはまだ6分の5を終えたばかり。強豪が揃い、群雄割拠の西地区をさらに盛り上げる”青の逆襲”に期待したい。

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