信州ブレイブウォリアーズ生原秀将が復帰戦で見せた“勝者のプレー” 「いつ呼ばれてもいいように準備を」
ベルテックス静岡戦で復帰を果たした信州ブレイブウォリアーズの生原秀将©Basketball News 2for1
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 Bリーグ2部(B2)は11日から13日にかけて各地でレギュラーシーズンの第17節が行われ、東地区・信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリングで西地区のベルテックス静岡と対戦。第1戦を66-75と落とすも、第2戦を83-60で勝利し、初対戦となった同カードを1勝1敗で終えた。

 信州は主力のペリン・ビュフォード石川海斗の欠場が続く中、生原秀将が昨年11月26日のバンビシャス奈良戦以来の復帰。第1戦(11日)は出場がなかったが、第2戦(12日)は8分24秒の出場で6得点3アシスト3スティールを記録した。プレータイムが制限される中、生原が持ち味を存分に発揮した復帰戦となった。

守備やアシストで存在感 ハンドラー不足を救った

 昨年12月以降、信州はポイントガードやボールハンドラーの多くを怪我で欠く状況が続いている。そんな中、所属2季目のエリエット・ドンリーや練習生から選手契約を掴んだ山崎玲緒などそれぞれが成長を見せ、司令塔として試合をコントロールしていた。

 しかし、第1戦ではそのガード陣が静岡の激しいディフェンスを前にミスを連発。オフェンスの悪い流れがディフェンスにも影響し、第1クォーター(Q)で8-24と大差をつけられる。その後は一時1点差まで迫る場面もあったが、要所でのシュートが入らず、点差を広げられて悔しい敗戦となった。強度の高いディフェンスに対して、どうボールハンドラーがゲームメイクをしていくのか。信州のウィークポイントと課題が浮き彫りになった試合だったといえる。

 そんな中、第2戦では左ヒラメ筋損傷で欠場が続いていた生原が約1ヶ月半ぶりにコートへ復帰。第1Q残り2分48秒から出場すると、持ち前の激しいディフェンスで前線からプレッシャーをかける。オフェンスではウェイン・マーシャルへのアシストや、フリースローを獲得するなど存在感を発揮。その後もスティールからレイアップシュートを決めたり、味方へのアシストを演出したりと、信州に欠けていた部分を補うかのような活躍を見せ、勝利に貢献した。その選手が出場している間の得失点差を表す「±」でも「+10」を記録するなど、生原のプレーが勝利の大きな要因だったことは間違いない。

 試合後、生原は「昨日(第1戦)は相手が激しくディフェンスをしにきて、とにかく自分たちのバスケットを壊しにきていて、そこで慌ててプレーするシーンが結構見られました。今日(第2戦)はそこを僕だけじゃなくて、みんなで改善しながらプレーできたことが良かった」と振り返り、チームとして課題点を修正できたことが勝利につながったと強調した。

8分24秒の出場で6得点3アシスト3スティールを記録©Basketball News 2for1

「ケガをしているときも頭を使って見ている 」

 試合から離れる期間が長いと試合勘を失い、100%のパフォーマンスを発揮することは難しい。それでも生原はコンディションが万全ではないにしろ、久しぶりの復帰戦で持ち味を発揮し、チームの勝利に貢献した。信州がB1に所属していた昨シーズンも同様に、脳震盪から復帰した長崎ヴェルカ戦ではハッスルプレーでチームを盛り上げ、勝利を呼び寄せるプレーを見せていた。どんな状況でも必ず勝利に結びつくようなプレーを見せる生原。その原動力はどこにあるのだろうか。生原は話す。

 「ケガをしているときも頭を使って見ていますし、昨日(第1戦)もプレータイムがないっていうのは分かっていたけど、自分だったらどうしようっていうのは常に考えながら、いつも呼ばれてもいいような状況でイメージしながら準備をしていました。あとは(石川)海斗さんだったり、P(ビュフォードの愛称)がいない中で、ポイントガードの部分はしっかりしないといけないなと思っていたので、責任もありました」

 ベンチから試合を冷静に分析し、チームを勝利に導くために必要なことについても考えていたという。

 「向こうのプレッシャーに対して自分だったら打開できるとも思いました。そこは昨日の試合をベンチから俯瞰的に見えたのも良かったと思います」

 試合までの準備期間も大切にする。生原が試合に出ていないときでも、同じポイントガードのチームメイトに積極的にアドバイスを送る姿もよく見られた。ここ数年は脳震盪やその他のケガで欠場を余儀なくされることが多いが、「準備をしっかりした上でのケガ」と語っており、心身ともに試合に対しての準備は欠かさない。

 「復帰戦にしては本当に素晴らしい貢献でした」

 生原のプロ意識の高さを知る勝久マイケルヘッドコーチ(HC)も、復帰戦での活躍に目を細める。

 「ケガをしたときには、やっぱりここ最近のヒストリーがあるからこそ、相当悔しがって、相当悲しんでいて。本当に身体を大事に、プロフェッショナルに取り組んでいる中で怪我したときの悔しさ、それがあるからこそ、こうやってカムバックできて笑顔を見れて、本当に嬉しいです」

勝負の後半戦へ健康状態が鍵 「プレーオフなどで欠けていてはダメ」

 前半戦の32試合を終えたB2リーグ。B1同様、18日と19日に行われるBリーグオールスターゲームのため、バイウィークに突入する。

 ここまで21勝11敗とし、東地区3位につけている信州ブレイブウォリアーズ。前半戦では主力選手の欠場や新加入選手の台頭、シーズン途中での外国籍選手の加入など、さまざまな動きがあった。まだまだムラはあるが、連勝や連敗を経てディフェンスの強度も少しずつ上がってきており、特にオフェンスではチーム全体で崩すことや、それに伴う個人のスキルも上がってきた印象だ。

 信州が所属する東地区はアルティーリ千葉富山グラウジーズ福井ブローウィンズなど強豪チームが揃っており、バイウィーク終了後はプレーオフに向けてより激しい戦いが予想される。

 後半戦に向けて指揮官は「みんながフィットして、お互い高め合えるような、1人1人の強みが出るようにチームとして本当に理解を深めていくことが必要です。それはディフェンス面でもオフェンス面でも。前半戦が終わって、得意なところと不得意なところが明確に出ているので、覚えてもらわないといけない部分は成長し続けること。同時に、不得意な部分をなるべくなくせるように。自分たちをより深く理解して、オフェンスでもディフェンスでも、我々のチームのベストバージョンになれるように成長していきたいと思ってます」と意気込みを語る。

 生原も「スケジュール感をどのように捉えるかはそれぞれだと思いますが、僕は危機感を持って取り組んでいきたいです。僕たちは優勝を目指しているので、プレーオフなどのときに(メンバーが)欠けていちゃダメだと思う。高いパフォーマンスを持っていけるように準備したいと思います」と強い眼差しで語った。

 1シーズンでのB1復帰を目指している信州ブレイブウォリアーズ。石川やビュフォード、テレンス・ウッドベリーら主力選手の健康状態も心配されており、B1復帰という目標に近づくためには、バイウィーク後にどれだけ万全な状態に戻れるのかが重要だ。生原も復帰し、明るい兆しも見えたところで締めくくった前半戦。B2優勝、B1昇格に向けて、健康になった完全体のチームをつくれるか。勝負の後半戦が始まる。

元チームメイトのサイモン拓海(中央右)と抱擁を交わす生原©Basketball News 2for1

(芋川史貴)

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